原題 "Star Trek Nemesis"。これまでとは違い、スタートレックの後に「:(コロン)」は入らないのが正式だと発表されています
邦題は前作「スター・トレック 叛乱」の方針とは異なり、スタートレックとは入らない「ネメシス/S.T.X」。S.T.X は「エス・ティー・エックス」と読むようで、テンではないんですね。本国で STX というのは、第10作ということからタイトルが決まる前から呼ばれていた略称・通称です
タイトルの "Nemesis" 「ネメシス」。パンフレットなどによると「ドッペルゲンガー」という意味を推したいようですが、素直に辞書の意味では「天罰、因果応報」や「強敵、大敵」となります。ただしこれは小文字で書いた場合で、Nemesis と書くとギリシャ神話の女神の固有名詞です。一般名詞の意味にもなっている「天罰、因果応報」を司るそうです [像] [絵]
冒頭のタイトルに使われているフォント (字体) が実際のロゴと異なっています。珍しいことではありませんが、「ネメシス」では文字の出方が変わっており、一部が反転しています。ピカード&シンゾン、データ&B-4 の「鏡」を意味しているんでしょうね
タイトル後、主なスタッフやキャストのクレジットが表示されてから本編というのが定番でしたが、今回はいきなり入っています
惑星ロミュラスの町並みは、同じくロミュラスが登場した TNG "Unification" 「潜入! ロミュラン帝国」(DS9 ネタバレ:"Inter Arma Enim Silent Leges" 「闇の指令」でも同様の町並みが登場) と同じ雰囲気を再現するように CG で作られました
ロミュラン評議会の中には、「ネメシス」のアートワークでもおなじみのバード・オブ・プレイ (bird-of-prey。「捕獲の鳥」、つまりワシ・タカなどの猛禽類) の巨大モニュメントが飾られています。以前からロミュラン帝国のエンブレムとして使われており、鳥がつかんでいる 2つの球はロミュラスとレムスを意味しています (フルタ製菓のスタートレック ピンズに採用)。「バード・オブ・プレイ」というのは古くはロミュラン船、最近ではクリンゴン船の種別名でもありますね
評議会の床はロミュラン中立地帯などの星図になっていますが、いまいちわかりにくいです。中立地帯は惑星連邦との間に設けられたいわば「緩衝地域」であり、双方が勝手に侵入することは許されていません
殺されてしまうロミュラン政務長官 (Praetor) の名前は Hiren ですが、言及されていません。ノヴェライズ邦訳では「ハイレン」と呼ばれています。後にシンゾンが受け継ぐ Praetor は「総督」「法務官」とも訳されたことがある国家元首の肩書きで、ロミュランが初登場した TOS "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」で既に言及されています (DS9 ネタバレ:3年前の "Inter Arma Enim Silent Leges" 時点ではネラル (Neral) が政務長官でした)。なお VOY "The Q and the Grey" 「レディQ」ではロミュラン女帝 (Romulan empress) の存在がほのめかされています
"Yes, sir." としか言わない背の高い方のロミュラン司令官には名前がありませんが、俳優は J・パトリック・マコーマック。DS9 "Doctor Bashir, I Presume" 「ジュリアンの秘密」で法務総監のベネット少将 (Rear Admiral Bennett) を、VOY "Counterpoint" 「偽りの亡命者」でデヴォア人カシックの部下、プラックス (Prax) を演じました
セラロン放射器を仕掛けたタローラ議員 (Senator Tal'Aura) を演じたのはシャノン・コックラン。TNG "Preemptive Strike" 「惑星連邦“ゲリラ部隊”」および DS9 "Defiant" 「奪われたディファイアント」でマキのメンバーの一人、カリタ (カリータ、Kalita) 役。また DS9 "You Are Cordially Invited" 「花嫁の試練」ではクリンゴン人でマートク将軍の妻、シレラ (Sirella) 役でした。Senator はロミュラン評議会 (Senate) のメンバーを示す肩書きで、時には大臣のような権限をもつ印象も受けます
タローラが評議会を出ていく時にソリア大使と会うと言っています。ソリア人 (Tholian) は、以前には TOS "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」にだけ登場している種族です。いわゆるヒューマノイド型ではなく、異様な姿をしています
シミターがセラロン放射線を使うことは実際にはなかったので、ロミュラン評議会のシーンだけが唯一効果を見られることになります。その途中ロミュランの血が緑色であることがわかります。これは耳が尖っていることと同様、元は一つだったヴァルカン人と共通の特徴を示しています
ライカーとトロイの結婚式 (披露宴) は、新郎ライカーの故郷アラスカという設定です
列席者の宇宙艦隊士官が着ている白い礼服は、前作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」で導入されました
ドクター・クラッシャーの隣には、息子のウェスリー・クラッシャーが座っています。出演シーンはカットされていたと聞いていたので、初めて見たときは驚きました。ただセリフは全くありません。演じるウィル・ウィートンは TNG 中期までレギュラー、その後ゲスト出演を繰り返し、今回 "Journey's End" 「新たなる旅路」以来 8年ぶりの出演です。ウェスリーは同エピソードで宇宙艦隊アカデミーを中退し、旅人と呼ばれる異星人と共に新たな生き方を歩んでいるはず…だったのですが、今回普通に制服を着ています。ノヴェライズではちゃっかり宇宙艦隊に復帰して既に中尉になり、ライカー艦長下のタイタンに配属されることになっています。何かちょっと間違っているような…
列席者にはヴァルカン人 (切りそろえた前髪も特徴)、ボリアン (皮膚が全部青くて髪がなく、顔が縦半分に割れているように見える) といった異星人の姿も見えます
スピーチを締めくくる "Make it so." は、ピカードが好んで使う命令表現です。一番多いのは船の発進時 (後で使われる "Engage." と同義) ですが、それ以外にも使われます
自身もスタートレックのファンとして知られるウーピー・ゴールドバーグが、"Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」以来のガイナン役として出演しています。ガイナンはエンタープライズ-D ではバーラウンジ「テン・フォワード」のバーテンダーでしたが、E には民間人はいないため恐らく乗船していないものと思われます。エル・オーリア人であるため少なくとも 500歳以上という年齢ですから、「23回」という再婚歴もうなずけますね
ウォーフが飲んで参っているロミュラン・エールは青い酒であるため、結婚式で飲んでいるシャンパンとは別です。ノヴェライズでは前日の「独身さよならパーティ」で飲んだもので、二日酔いだということになっています。ロミュラン・エールが初登場したのは映画 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」で、ドクター・マッコイがカーク提督の誕生日にもってきました。当時も違法酒ですが、何かと人気のあるアルコールですね。 (DS9 ネタバレ:3年前の "Inter Arma Enim Silent Leges" では禁制品ではなくなっており、今回の発言と矛盾します。ドミニオン戦争での協力体制下だけの特別措置だったのでしょうか?)
ベタゾイドの結婚式が列席者を含め全裸で行われることは、TNG 初期の "Haven" 「夢の人」で初めて触れられました
「紳士淑女、そして御来賓の超性別種族の方々…」で始まるデータの言葉。「地球とベタゾイドの慣習」というところで、地球にはテラン (Terran) という用語が使われています。普通地球人は human と表現するのですが、特に地球であることを明示する場合は Terran を使うこともあります。最近は human を短絡的に「人間」と訳しちゃうことが多いので、原語で区別されていてよかったですね。DS9 の鏡像宇宙では地球人が虐げられているためか、テランという言葉しか使われません
データが歌う曲のタイトルは、歌詞にも含まれている "Blue Skies" です。歌を聴いてうなだれるウォーフが言うように、作詞・作曲家のアーヴィング・バーリン (1888〜1989) による歌。同名のミュージカル映画「ブルー・スカイ」(1946年パラマウント映画) で使われています。なおその映画にはビング・クロスビーが出演しており、TNG ターシャ・ヤー役デニス・クロスビーの祖父です。余談ですが、ウォーフが「バーリンだ…」というシーンで米国人は爆笑していたのですが、私にはよく理由がわかりませんでした
「ネメシス」で 3作目となる U.S.S.エンタープライズ NCC-1701-E。戦闘シーンに合わせて、魚雷発射口やフェイザー発射帯が追加されています
ウォーフは保安部長としてエンタープライズに戻った…ように見えますが、所属部門を示す制服インナーの色は DS9 (戦略作戦士官でした) と同じ赤色のままです。保安部員なら黄 (金) 色になるはず。 (DS9 ネタバレ:最終話でウォーフはクリンゴン総裁の求めもあって DS9 を去り、惑星連邦の駐クリンゴン大使になっています。脚本段階では結婚式でクラッシャーに対して「外交官としての生活には馴染めませんでした」と漏らすシーンがありました (ノヴェライズには存在)。3年前のことですから、それだけ務めれば立派?)
ポジトロニックブレインは、データやローアといったスン型アンドロイドに使われている根幹技術です。ポジトロン=陽電子 (電子の反物質) が利用されています
ブリッジにヴァルカン人クルーがいます
コラリス3号星がロミュラン中立地帯に近いことを示す星図で、中立地帯=ロミュラン方面が左側、連邦領域が右側に描かれています。通常惑星連邦を中心とした銀河系図の場合、ロミュラン帝国があるベータ宇宙域は右側に描かれるため、左右逆になってちょっと違和感がありました。ずっと後のバッセン断層のシーンも同様です。もっとも宇宙に上下左右があるわけではないんですが…
エンタープライズの操舵を務めるのはブランソン。階級章はどうやら大尉を示しているようです。ブランソンという名は脚本ジョン・ローガンの友人ドナ・ブランソンから。艦長席からスクリーンに向かって右側が操舵席、左側がデータが担当するオプス (=オペレーションズ・マネージャー、船の各部門を総合的に調整。VOY ではキム) 席です。パンフレットでもデータが「主任ナビゲーター」と書かれていますが、TOS と設定が変わったことを無視した大きな間違いです
初登場のシャトルクラフト「アルゴ (Argo)」がフォースフィールドを抜けながら発進します。「ネメシス」でも何度も言及・使用されるフォースフィールド、直訳すれば力場は、一種のバリアです
アルゴは「ネメシス」の目玉である四輪車だけではなく、シャトル自体にもしっかり名前が描かれています。ショック緩和やタイヤの固定装置が備え付けられていることから、二つで一組みたいな扱いなんでしょうか? 恐らく特撮の元祖的作品「アルゴ探検隊の大冒険」(1963) として映画にもなった、アルゴ船が由来でしょうね。同映画は最近 TV映画としてリメイクされ、ENT トゥポル役のジョリーン・ブラロックが出演しています。アルゴ船は星座としても存在していましたが、あまりにも巨大だったために「らしんばん (羅針盤)」「とも (船尾)」「ほ (帆)」「りゅうこつ (竜骨)」の 4星座に分割されてしまいました
「ネメシス」では新型のトリコーダーとフェイザーが使われます。今回大きく変わったトリコーダーは、後でトロイを調べるシーンでアップになりますが、フリップ開閉式ではなくなっています。どちらかといえばパッドに近くなっており、ENT のスキャナーに似た感じです。個人的には少し残念…。フェイザーはあまりアップにはなりませんが、多少新しくなっています (データハウスビーグルでレプリカの販売が始まりました)。ライフル型のタイプ3 も同様です
B-4 の頭を見てウォーフが「お前だ」という字幕…クリンゴン人というだけで乱暴な言い方になってしまったのでしょうか?
B-4 の頭を持ち上げたデータが "Fascinating."、B-4 も "Fascinating."。スポックもよく使っていました
質問を続ける B-4 (の頭) をケースに入れるデータ、頭をペンペンとなでる仕草が笑えます
データと B-4 が同じ顔なのは、製作者のヌニエン・スン博士が自分の顔にしたからです。悪の心をもってしまったローア (現在は機能停止というか死亡) も同じ顔をしており、俳優のブレント・スパイナーが一人 3役で演じたこともあります。吹き替えではわかりやすくするためか、ローアやスンには別の声優が割り当てられていました。B-4 はデータと同じ大塚芳忠さんだそうです
ピカードがライカーを「ナンバー・ワン」と呼ぶことがあります。副長=First Officer の意味ですが、ピカード独特の言い方であり誰でも使うわけではありません。ただし TOS パイロット版 "The Cage" 「歪んだ楽園」では、ナンバー・ワンと呼ばれる女性副長がいました
ピカードがレプリケーター (分子合成機) に注文するのは、これもシリーズからお馴染みの "Tea, Earl Grey, hot."。言い方も決まっています
通信画面でしか登場しない提督もある意味定番ですが、今回は配役がふるっています。ピカードを抜いて先に昇進した、キャスリン・ジェインウェイ提督です。第4シリーズ VOY の主人公であり、U.S.S.ヴォイジャーの艦長として、デルタ宇宙域から 7万光年の帰還を果たしました。しかしあっさり提督に昇進したということは、劇中でもわかるように宇宙艦隊司令部づきになっているわけで…艦長として新たなヴォイジャーの航海を望んでいた VOYファンには残念かも。なおヴォイジャーは最終話で、トランスフェイズ魚雷や装甲装備といった反則気味の未来の技術をもち帰ったはずですが、明らかにエンタープライズには装備されていないようです。当然といえば当然でしょうが…
ジェインウェイが触れる、ピカードが過去に対処した種族の 1つ目がソーナ人。ルアフォをリーダーとする、前作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」での敵です
同じく 2つ目はボーグで、最近では前々作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」に登場しました。VOY では元ボーグのセブン・オブ・ナインがレギュラーとして途中から加わっています (なおセブンが初登場したのは第3シーズン最終話という誤記を書籍類で非常に多く見かけますが、第4シーズンからしか出ていません)
作戦室 (ピカードがいる艦長用待機室) の位置は、TVシリーズではブリッジの艦長席から見て左側にありましたが、右側に移っています
ワープに入るとき、これまでの直進ではなく船体を「ひねりながら」になっています。結構新鮮でした
星図を見る限り、ロミュラスは第2惑星、レムスは第3惑星のようです。互いに回っているわけではなく、近接した軌道を取っているみたいですね。レムスはタイトル直後にも登場、ロミュラン評議会のシーンでも触れられています。ロミュランが初登場した TOS "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」でもロミュランの中心惑星がロミュラスとレムスであることは触れられていました。ところがそれ以降は、レムスは存在を忘れられたかのような扱いでした。「ネメシス」ではレムス人が初登場する上に、これまでの不平等を説明するかのような設定が導入されており、上手いですね。
レムスは半面が常に恒星に向いており、半面が常に闇の世界だそうです。自転と公転周期が等しいんでしょうね。地球に対する月の運動と似ています
惑星レムスの鉱山 (鉱脈) に豊富に存在するダイリチウムは、高速ワープを行うのに欠かせない結晶物質です。レプリケートはできないらしく、とても価値のある資源となっています
クルーが集まっている会議室は観察ラウンジと呼ばれ、ブリッジの後方に位置します。TVシリーズと比べて、窓と反対側の壁一面にコンピューターが設置されていますね
レムス人はドミニオン戦争でも急襲部隊として活躍したそうです。ドミニオンは第3シリーズ DS9 で導入された、ガンマ宇宙域の強大な勢力。ワームホールを通ってアルファ宇宙域に達し、カーデシア帝国と共に戦いました。対して連邦側はクリンゴンやロミュランと協力し、スタートレック史上例のない大規模な艦隊同士の戦闘が描かれました
B-4 が機関部の作業用制服を着せられるのは、ローアの最初 (TNG "Datalore" 「アンドロイドの裏切り」) と一緒ですね
ロミュラスに到着したとき (既に 17時間経過していますが)、画面の左の方で音と共に光が発せられているように感じます。何を意図しているのでしょうか (ただの恒星の光?)
今回の敵船となるシミター (Scimitar=三日月刀、偃月刀) が遮蔽を解きながら登場します。字幕では「偽装 (シールド)」と訳されている遮蔽は、文字通り姿が見えなくなる技術。透明になるだけで、その場から消滅してしまうわけではありません (TNG では何もかも突き抜けてしまう「位相遮蔽」もありましたが、特殊な例です)。シミターの幅は 1,350メートル、長さ 890メートルとされています
ここで初めてレムス人が登場。耳が尖っていることから、元はロミュラン、そしてヴァルカンと同じルーツなのでしょうか? Viceroy は辞書では「副王」「総督」という意味ですが、字幕では政治的肩書きとして「副 (政務) 長官」と訳されています。本来は、必ず「シンゾンの Viceroy」という表現がされているように、シンゾンの「副官、右腕」といったニュアンスでしょうね。ノヴェライズのみヴクラック (Vkruk) という名前が与えられています。演じるのはロン・パールマンで、TVシリーズ「美女と野獣」のほか映画「薔薇の名前」(1986)、「ハックフィンの大冒険」(1993)、「蜘蛛女」(1993)、「ロスト・チルドレン」(1995)、「セカンドインパクト」(1997)、「エクスカリバー」(1997)、「エイリアン4」(1997)、「クレイジー・ナッツ 早く起きてよ」(1998)、「ファイナル・サンクション」(1999)、「ブレッド&ローズ」(2000)、「スターリングラード」(2001)、「ダウン」(2001)、「ブレイド2」(2002)、「シェイクダウン」(2002) など多数の出演作があります。副長官が持っている杖は、フィギュアにも入っています
物体を分解して遠隔地で再構成する「転送」は、映画になると予算のおかげか映像が綺麗になるのが面白いですね。種族によって映像効果が違うのも見逃せません。「ネメシス」では連邦のほか、レムスのものを見ることができます
闇の中からシンゾンが姿を見せます。俳優はトム・ハーディーで、映画公開時点で 25歳です。TVミニシリーズ「バンド・オブ・ブラザース」第9・10話、映画「ブラックホーク・ダウン」などに出演しています
シンゾンが使うナイフは、ポスターなどでもクローズアップされていましたね。フィギュアの備品でもあります
過去 2作品のエンタープライズ-E の医療室セットは、明らかに VOY の使い回しでした。今回はベッドは前々作から流用しているそうですが、セットは違うように見えます (未確認)。医療室にある 2匹のヘビが巻き付いているマークはカドゥケウスの杖といい、医療関係のシンボルとして共通に使われています (本来はヘビ 1匹が巻き付いている「アスクレピオスの杖」が医学で、2本は「ヘルメスの杖」といって商業になるようですが…検索していたら泥沼にハマりました)
スーラン司令官 (Commander Suran) (演:ジュード・チコレッラ、「デアデビル」などに出演) とドナトラ司令官 (Commander Donatra) が登場。ドナトラは「中佐」と訳されている箇所がありますが、宇宙艦隊の Commander=中佐と混同した誤訳ですね。ロミュランでは Commander の下に Subcommander という階級があり、宇宙艦隊の体系とは全く異なります。TNG "Face of Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」で、ロミュランに亡命していた人物がピカードを Commander と誤って呼んでしまうシーンがあるように、一般的に司令官が艦長にあたるようです。ドナトラも後でウォーバード・ヴァルドアを指揮していますね。彼女の名前は、これまたローガンの友人ドナ・ブランソンに由来しています。演じるディナ・メイヤーは、TVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」や「フレンズ」に複数回出演しており、その他「ハード・ジャスティス」(1993)、「JM」(1995)、「ドラゴンハート」(1996)、「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997) などの出演歴があります
B-4 が抱いているネコはスポット。当初はオスでソマリ種でしたが、いつのまにか性別も種類も変わってしまいました。エンサイクロペディアには、姿を変えられる流動体生物ではないか、または転送機の事故のせいかという冗談が載っています
ロミュラン評議会の奥の部屋で、ピカードとシンゾンが二人だけで食事をします。ピカードの前に置いてある料理に注目。10秒ぐらいすると忽然と消えています。いつのまに…
レムス人が奴隷扱いされているというのは、先にも触れましたがこれまで全く表に出てこなかったことを上手く説明していますね。逆に、字幕では訳出されていませんが「秘密基地」でシミターを建造したというのも、うなずける…かも
ピカードがアルバムから、若い頃の写真を取り出します。当然シンゾン役のハーディーが映っているわけで、制服は古い時代の士官候補生のものです。髪はありませんが、TNG "Tapestry" 「運命の分かれ道」ではフサフサの少尉でした。候補生の頃に剃っていたのか、それとも少尉の頃に「調整」していたのか…。また TNG "Unification" 「記憶侵入者ユリア星人」では比較的最近の過去が描かれ、文字通り取って付けたようなピカードの髪を目にすることができます。さらに TNG "Rascals" 「少年指揮官ジャン・リュック・ピカード」では 12歳の頃に戻ってしまい、フサフサです。しつこいですか
写真を見ている部屋はピカードの自室で、最後に B-4 と話す場所でもあります
ライカーがトロイに対して使う「イムザディ」は、字幕で御丁寧に訳されていたようにベタゾイド語で「最愛の人」を意味します。初言及はパイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」にまでさかのぼります
レムス人の副長官がテレパシー能力をもっていることも、元はヴァルカン人と一緒というのを示唆しているのかもしれませんね
B-4 内部に仕掛けられたトランスポンダーを、転送機 (トランスポーター) と 2カ所とも誤訳しています。トランスポンダーは中継器、位置発信器といったような意味です
シミターの艦長席にはレプリケーターが装備されており、シンゾンはアールグレイではなくて単なる "Tea, hot." を注文します
「抵抗は無意味だ」はボーグ集合体の決まり文句。かつてピカードが同化されてロキュータスとなったときも、自ら言っていました
B-4 になりすましていたデータが、レムス人に見事なヴァルカン首つかみを披露します。ネックピンチ、ナーブピンチ (神経つかみ) とも呼ばれ、スポックはもちろん VOY トゥヴォックや ENT トゥポルも使います。以前 TNG "Unification" 「潜入! ロミュラン帝国」でスポック大使がやっているのを見て、データは簡単に習得してしまいました
スコーピオンを捕まえようとするシミターのトラクタービームが、画面端に少し見えます
ロミュラン評議会のスクリーン、通信終了後にもバード・オブ・プレイのシンボルが映し出されます
シンゾンが必要としているのは脊髄ということに字幕ではなっていましたが、実際は "complete infusion"「完全な輸血」、つまりピカードの血液全てです
宇宙艦隊の船が集まるのはセクター1045。セクター=星域は、20光年四方を表す区分です。地球はセクター001 に属します
ワープコアにフォースフィールドを張るのは理にかなっているんでしょうが、戦闘が始まるとあっという間に解除されちゃってますね
ピカードが現在地を確認するために入る広い部屋は、ノヴェライズでは機関室になっていますが、"Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」ではエンタープライズ-D のが登場した星図作成室と考えるのが自然でしょうね
大モニターに表示される 7隻の船団は「宇宙艦隊戦闘グループ・オメガ (Star Fleet Battle Group Omega)」という名前がつけられており、各艦の詳細は以下の通りです・U.S.S. Intrepid イントレピッド NCC-74600ピカードがつぶやく "For now we see through a glass, darkly." は、新約聖書「コリント人への第一の手紙」13章12節より。定訳は「わたしたちは、今は、鏡に映して見るようにおぼろげに見ている」 [参考]
ヴォイジャーと同じイントレピッド級の一番艦 (プロトタイプ)。VOY "In the Flesh" 「偽造された地球」で言及
・U.S.S. Valiant ヴァリアント NCC-75416
クラス不明
・U.S.S. Galaxy ギャラクシー NCC-70637
エンタープライズ-D と同じギャラクシー級の一番艦。DS9 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」でドミニオン戦争に参加しています
・U.S.S. Aries アリーズ NCC-45167
ルネッサンス級。TNG "The Icarus Factor" 「イカルス伝説」などで言及。ライカーが艦長職を断った船
・U.S.S. Nova ノヴァ NCC-73515
VOY "Equinox, Part I, and II" 「異空生命体を呼ぶ者達(前)(後)」に登場した、イクワノックス (NCC-72381) と同じノヴァ級の一番艦かもしれません。ですが番号はノヴァの方が大きくなっています
・U.S.S. Hood フッド NCC-42296
エクセルシオ級。TNG パイロット版 "Encouter at Farpoint" 「未知への飛翔」などで登場。ライカーがエンタープライズの前に乗っていた船
・U.S.S. Archer アーチャー NCC-44276
クラス不明。現在放送中の第5シリーズ ENT の船長にちなんで名付けたものと思われます。ENT 開始後に並行して放送しているシリーズはないため、初めての ENT に由来する設定と考えることもできます
エンタープライズとシミターは、一種の星雲であるバッセン断層 (Bassen Rift) に入ります。DS9 を意識して艦隊を用意させながらも、単独の戦いに持ち込ませるための設定と言えるかもしれませんね。スタートレックに出てくる国家や星を地図として網羅した "Star Trek: Star Charts" にも、きちんと掲載されています。名前はローガンのペットであるビルの犬種、バセットハウンドに由来
シミターが遮蔽したままで攻撃できるというのはライカーのセリフでもチラッと触れられていますが、ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」でのごく一部の例外を除き、これまでの船では不可能でした。映像を見る限り、撃つときに周辺だけ一瞬遮蔽が解除されたようになっていますね
ライカーが命じる「防御パターン・カーク・イプシロン」。カークは初代 U.S.S.エンタープライズ船長で、映画 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で命を落としました
シンゾンの誘いに応じて作戦室へ向かう前、艦長席を立ったピカードが上着を下へ引っ張って正します。TNG でも何度も見られたこの仕草を、ピカードが編み出した船の戦法と同様に「ピカード・マヌーバー (戦術、戦法)」と呼びます
ホログラム・シンゾンとの対話シーンの前にもありましたが、ピカードの作戦室には透明のエンタープライズが飾られています。そういえば前売り券を買うともらえた第2弾プレゼントも、クリア版のミニキーホルダーでしたね
2隻の初登場ロミュラン・ウォーバードが援助に現れます。片方はドナトラ指揮のヴァルドアですが、もう一隻はスーランでしょうか? 幅908メートル、長さ604メートルとされています
もげたウォーバードの翼がエンタープライズに衝突するシーンでもわかるように、シールドは船に密着した形で描かれています。明確にセリフなどで区別されたことはないと思いますが、防御シールドは球形に描かれる場合と、今回のように目立たないようになっている場合があります。DS9 でもそうだったように、非常に接近した戦いでは後者にするのでしょうか
ヴァルドアをおびき寄せるするためにシンゾンが取った作戦で、原語では「後部左舷」の 4分の1 区画だけ遮蔽解除するように言っています。前に触れた遮蔽時攻撃もそうですが、かなり自由に遮蔽を操れるようです
「トロイ作戦」でシミターの位置を突き止めた際、エンタープライズが発射したのは今までの黄色い光子魚雷ではなく、青い量子魚雷を発射しているように見えます。映像に映っている範囲で 9発は発射していて、その後光子魚雷は尽きたというデータのセリフがあります。量子魚雷も含めてという意味かもしれませんが、数も含めて「とっておき」の武器だったみたいですね。それでもシミターのシールド強度は 70%ですが…
副長官たちレムス人が転送侵入してきた際、ウォーフが第29デッキに向かいますが、その際代わりにコンソールにつく保安士官が一瞬だけ映ります。彼はブライアン・シンガーで、パトリック・スチュワートも出演している「X-MEN」シリーズの監督です。パンフレットなどではヴァルドアの砲撃手がシンガーだと書かれていますが、私は違うように思うんですが… (実際、パンフレットの 19ページ真ん中には、スチュワートやリック・バーマンと話しているシンガーの写真があります。艦隊士官の制服です)
廊下を歩くウォーフが、ロミュランを称える一言を発します。これまで、父親モーグを殺したロミュランを憎んでいたという背景があってのセリフですね
ブリッジを狙われてスクリーンが大破し、ブランソンが宇宙に吸い出されてしまいます。「見慣れないクルーが操舵席にいたら危ない」法則が適用されましたね。あの席のクルーは凍らされたり、無意味に殺されたり、いきなり死んでいたりと結構悲惨な目に遭っています。前々作でもホーク大尉がボーグに同化された上クルーに襲いかかり、結局宇宙の藻くずとなりました。スクリーンが失われて実際に「窓」となってしまうのは、VOY "Year of Hell" 「時空侵略戦争」での同様のシーンにローガンが影響されたそうです
代わりに操舵を担当するのがトロイですが、エンタープライズ-D が失われたときも彼女が担当していました。E の最後を覚悟した人も多い…?
向かってくるエンタープライズを避けるため、シンゾンが "Hard to port!" と命じます。字幕では「左舷反転」になっていましたが、意味的には「左舷全開」というか、古い言葉で言えば「取り舵一杯」ですね。ある番組で紹介されていた予告編の字幕では「ハイドロポートを!」と絶叫していました。一体何でしょう
データを偲ぶために振る舞われるワインのボトルには、「シャトー・ピカード」と書かれています。フランス・ラベールにある実家のもの
ライカーが思い出せなかった、データが口笛で吹こうとしていた曲は "Pop Goes the Weasel" 「いたちがぴょんとはねてでる」(邦題は多数あり)。マザーグースの歌で、パイロット版より
U.S.S.タイタンのライカー艦長が、最後にピカードと話すシーン。首元の階級章は、きちんと 4つの星が輝いています。作戦室を出ていくときの歩き方は、ライカー然としていますね。ライカーとトロイがタイタンに移ることはわかりますが、クラッシャーもエンタープライズを降り、宇宙艦隊医療部へ異動することになっています
エンドロール最後の最後に、協力会社として日立のクレジットがありますが、その少し前にはディスプレイメーカーの EIZO NANAO も
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