映画エピソードガイド
「ネメシス/S.T.X」 (2)
「スター・トレック ネメシス」
Star Trek Nemesis
[その1 | その2 | その3]
6. メモリー・ダウンロード
組み立てられた B-4 に対して、作業しているラフォージ。「艦長が記憶ダウンロードに賛成したなんて、まだ信じられないよ。」 B-4 はエンジニアの制服を着ている。 データ:「ピカード艦長は、B-4 が恐らく私自身と同じ自己実現パラメーターを備えた設計だと、認めていらっしゃる。私の記憶痕跡が彼のポジトロニックマトリックスに上手く結合すれば、彼は私の能力が全て手に入るはずだ。」 頭とケーブルでつながれたコンピューターを挟んで、B-4 と背中合わせに座っている。 「ああ、だが彼もお前の記憶の全てを同様に手に入れるんだ。お前はそれで気分がいいと感じるのかい?」 「私は何も感じないよ、ジョーディ。私の記憶痕跡があれば、より完璧な個人として機能できると信じている。」 「お前と同じ個人ってことか。」 「そうだ。」 「…彼はお前のように作られていないかもしれないぞ、データ。まさにこうなるように、作られているのかもしれない。」 「そうかもしれないが、潜在力を開拓させる機会を与えるべきだと思う。」 「ふむ。OK、終わったよ。」 ラフォージはデータからケーブルを外した。データの髪が自動的に降り、端子を隠す。 立ち上がり、B-4 に近づくデータ。「B-4、今いるのがどこかわかりますか?」 B-4:「私は明かりのついた部屋にいる。」 ラフォージはデータを見た。 データ:「私達の父さんを思い出せますか?」 B-4:「私達の父さん?」 「ええ、スン博士です。」 「いや。」 「この船の艦長の名前はわかりますか?」 「艦長…いや。」 ラフォージ:「…データ、彼は大量のプログラミングを同化中だ。いいかい、彼はプロトタイプなんだ。お前に比べるとほとんど進んでいない。俺たちには彼のマトリックスが適応できるかもわからないんだ。もっと時間を与える必要がある。」 B-4 のケーブルを外すデータ。「ジョーディ、このサーボの目的は何だい?」 首の部分に機械が見える。 ラフォージ:「どれ?」 「これだ。」 「これは余剰記憶ポートだ。神経経路がオーバーロードした時の、一時的な記憶蓄積かもしれない。いくつか診断を行う間、しばらく彼をここにおいててもいいかな。」 「ああ、構わないよ。」 B-4 は立ち上がった。 ラフォージ:「データ。」 B-4 に話すデータ。「駄目です。あなたはラフォージ少佐と残らなくてはいけません。彼は手伝ってくれようとしています。」 再び座る B-4。 |
7. 無敵の戦艦
惑星の軌道上にいるエンタープライズ。 『航星日誌、宇宙暦 56844.9。エンタープライズはロミュラスに到着し、指定された座標で待っている。何度我々から呼びかけても、返答はない。17時間待っている。』 スクリーンのロミュラス、そして遠くに見えるレムスを見つめるピカード。「カウンセラー。」 トロイ:「彼らはいます、艦長。」 立ち上がり、スクリーンに近づくピカード。 ウォーフ:「艦長、シールドを上げることをお勧めします。」 ピカード:「まだだ、ミスター・ウォーフ。」 ライカー:「艦長、外交手順は尊重しますが、連邦評議会はここにはいません。我々だけです。」 ピカードはライカーに振り返った。「我慢だ。外交は非常に厳しい仕事だ。我々は待つ。」 その時、スクリーンに映るものがある。 データ:「艦長…」 見るピカード。巨大な船が遮蔽を解除していく。 ウォーフ:「シールドを上げます。」 ピカード:「駄目だ!」 「艦長…」 「戦術分析だ、ミスター・ウォーフ。」 船の情報を読み上げるウォーフ。「ディスラプターバンク 52基、光子魚雷ベイ 27口、第一・第二シールド※1。」 船は完全に姿を現した。 ピカード:「天敵だな。」 その船はエンタープライズに近づき、動きを止めた。 ウォーフ:「呼びかけられています。」 ピカード:「スクリーンへ。」 スクリーンに映った異星人が、こちらに向き直った。見つめるトロイ。 異星人:『エンタープライズ、こちらはレムス・ウォーバード・シミター※2だ。』 ピカード:「シンゾン執政官、お会いできて…」 『私はシンゾンではない。彼の副官※3だ。…我々は転送座標を送信する。』 副官は通信を終えた。 ライカー:「…あまり話し好きではないですね。」 ピカード:「乗船班は第4転送室へ。」 ブリッジを出るライカーたち。 |
※1: わざわざ「位相シールド」 ※2: Scimitar 「三日月刀」の意味 ※3: Viceroy (ロン・パールマン Ron Perlman ドラマ「美女と野獣」、映画「エイリアン4」、「スターリングラード」などに出演) 名前は不明。声:廣田行生 |
8. シンゾン長官
シミター。 転送されるピカードたち。辺りは暗い。 トリコーダーを使うデータ。 後ろのドアが自動的に開いた。中の広い観察ラウンジに入る。巨大な円形の窓。 隠れて見ている者が声を上げた。「この暗さは許してくれると思う。我々は明かりを嫌うのだ。」 ピカード:「…シンゾン※4執政官?」 男が現れた。「ピカード艦長。ジャン・リュック・ピカード。」 暗いため、顔はよく見えない。「もっと背が高いとずっと思っていた。おかしいかな?」 ひそかにトリコーダーを使うデータ。 シンゾン:「堂々と私をスキャンしていいぞ、データ少佐。」 データが取り出すと、新たな反応がある。 闇の中からレムス人の副官が出てきた。 ピカード:「あなたは我々が想像したのとは違いますね。」 シンゾン:「違う?」 ウォーフ:「地球人だ。」 笑うシンゾン。 トロイを見つめているらしい。 ピカード:「なぜ我々がここに来るのを求めたんですか? …執政官?」 シンゾン:「今まで地球人の女性を見たことがない。」 トロイ:「私は半分だけ地球人です。」 「ディアナ・トロイ…ベタゼッド出身。エンパシー、テレパシー能力がある、船のカウンセラー。このことは全て知っていたが、君がこんなに…美しいとは知らなかった。」 シンゾンが階段を下りてくるのに合わせて、ライカーもトロイに近づく。「我々の人員について、かなり詳しいようですね。」 シンゾン:「ああ、そうだ。ライカー副長。髪に触ってもいいかな?」 ピカード:「我々は、かなり重要性があるということが保証されてロミュラスへ来ました。我々連邦の代表に言いたいことがあるなら、今すぐお願いします。」 「そうだな。すまない、艦長。我々が話さなければならないことは、たくさんある。」 「我々が話すことを是非知りたいですね。」 中央に立つシンゾン。「統一だ、艦長。我々の間にある壁を取り壊す、我々が一つであるとわかるように。我々を同一にすることを話しているのだ…平和だ。我々は平和が欲しい。」 ライカーと顔を見合わせるピカード。 シンゾン:「今ここで、君たちはこう考えているだろう。『こんな上手すぎる話は信じられない』。だが、平和のチャンスが十分期待できるのを無視できないと考えてもいる。…そうだろう?」 ピカード:「…ええ。」 「それでは我々の議論に、いくらか明かりを差し込ませる時だろう。コンピューター、照明を 4段階上げろ。※5」 下がる副官。 部屋が明るくなり、シンゾンの姿がはっきりと見えるようになった。 ピカードはその顔を見つめる。 シンゾン:「私がまだ幼かった頃、奇妙な病に襲われた。音に対して過敏症になった。ごくわずかなささやき声でも、私には苦痛となった。誰も何もできなかった。やっとで私は地球の病気にいくらか経験のある医者に頼り、シャラフト症候群※6と診断された。知っているだろう、艦長。」 ピカードを見るトロイたち。 ピカード:「…ああ。」 シンゾン:「それなら、非常に稀な症候群だと知っているはずだ。遺伝性だ。どうやら、家族の男性は皆かかるらしい。結局私は治療された。今は君同様に聞くことができる、艦長。君同様に見ることができる。君同様に…全てを感じることができる。」 ピカードに近づく。「実際、私は君が感じるとおりに感じるのだ。そうだろう、ジャン・リュック? …ディナーに来てくれ…明日ロミュラスで、我々二人だけで。いやこう言うべきかな…我々一人だけで。」 シンゾンはナイフを取りだした。近づくデータを目で牽制する。 ナイフで自分の手を傷つけるシンゾン。血が滴る。ナイフを差し出す。「君はこれが欲しいと思う。」 受け取るデータ。 シンゾン:「それでは明日会おう、艦長。我々には話し合うことがたくさんある。」 礼をする。 階段を上るシンゾン。「コンピューター、照明を元の段階に戻せ。」 副官もついていく。 ピカードはシンゾンを見つめていた。 シンゾンのナイフから血をスポイトで採り、顕微鏡で見るクラッシャー。 医療室にはピカードもいる。 2つの DNA 構造が表示される。全く同じだ。 クラッシャー:「間違いありません、艦長。あなたのシャラフト症候群の悪性変性そのものです。彼はクローンです。恐らく毛包か皮膚細胞を使ったんでしょう。」 ライカー:「どうして?」 ピカード:「突き止めるつもりだ、ナンバー・ワン。宇宙艦隊に状況を伝えてくれ。一体彼がどこから来たのか知らなければ。カウンセラー。」 出ていく 2人。 ※7廊下を歩くトロイ。「彼はテレパシーに抵抗するよう訓練されたようです。私が感じた感情は異常でした。非常に理解しづらいものです。」 ピカード:「彼は心から平和を求めているように思うか。」 「わかりません。私が得た最も強い感覚は、艦長に対してとても興味があるということでした。あなたを知りたがっています。」 「本当に彼が?」 ターボリフトのドアが開く。 「艦長、そういうお気持ちになるのは最もです。私が艦長から感じた怒りは…」 「あそこに立って彼を見るのがどんなことだったか、わかるのか?」 「艦長が抱いた気持ちは、自己喪失です。」 「…まるで…私の一部が盗まれたようだった。」 「我々は自分の唯一性を大切にします。自分が一人しか宇宙にいないはずだと思うものです。」 「…もう二人になったな。」 中に入るピカード。 |
※4: Shinzon (トム・ハーディ Tom Hardy TVミニシリーズ「バンド・オブ・ブラザース」、映画「ブラックホーク・ダウン」、「ドット・ジ・アイ」などに出演) 声:猪野学、ドラマ「ピュア・ラブ」シリーズに出演 ※5: 「レベル4 に」 ※6: Shalaft's syndrome ※7: DVD 特典映像、削除シーンその4 「自己の喪失」。予告編 (Full Trailer) では使われています |
9. 忠誠心
ロミュラン議会。 男性が話している。「我々はお前を援助した、シンゾン。評議会を暗殺させるために。我々に連邦を攻撃するのに最適なタイミングだと言ったな。なぜ今まで遅れているのか理解できない。」 カーテンが引かれた議会に座っているシンゾン。「お前は理解する必要はない。」 話し続けるロミュランの司令官。「それにエンタープライズをここまで連れてきて…どういう目的なのだ?」 後ろには以前の執政官に掛け合った司令官たちや、タローラ議員もいる。 シンゾン:「私には目的がある。」 「それなら我々に教えるべきだろう。」 シンゾンは叫んだ。「黙れ、ロミュラン!」 シンゾンを見る副官。 シンゾン:「……もっと忍耐を学ぶべきだ、司令官。毎日 18時間ロミュラン看守からムチを受ければ、すぐに忍耐を理解できるだろう。…さあ行け。」 ロミュランは皆出ていく。 シンゾン:「ドナートラ司令官※8。残ってくれたまえ。」 女性のロミュランが立ち止まった。 立ち上がるシンゾン。「お前に考えて欲しい言葉がある。忠誠だ。それは私に仕える者から要求することだ。」 ドナートラ:「私があなたにお仕えするのですか?」 「そうだ。そう思うぞ、忠実にな。それに引き換えスーラン司令官※9は…私を邪魔する。」 「もう一つ別の言葉があります、執政官。信頼です。」 シンゾンに近づいていくドナートラ。「あなたは私を信頼しますか? どれくらいまで、その信頼を強めて下さいますか? どれくらい…深く? 司令官として、どうやって彼女自身はあなたに誠実を証明すればいいのでしょう。女として、どうやって?」 顔に手を伸ばす。 シンゾンはその腕をつかんだ。「お前は…女ではない。お前はロミュランだ。私に忠実に仕えれば、報われるだろう。その可愛い目をスーラン司令官に向けておけ。そして裏切りの兆候が少しでもあれば…」 締め上げる。 ドナートラ:「彼を処分します。」 「そうすれば、お前は自分を証明することになる。」 手を離すシンゾン。「…さあ行け?」 礼をし、下がるドナートラ。 シンゾン:「それと司令官…また私に触れようものなら…お前を殺す。」 レムス人が扉を開け、出ていくドナートラ。 突然シンゾンが苦しみだした。副官が近づく。 その様子を扉越しに見るドナートラ。 副官はシンゾンの身体に手を当てる。 扉に近づくドナートラ。 シンゾンは落ち着いたようだ。 ネコのスポット※10をなでていた B-4 は、機械音と共に急に動きを止めた。ひざから降りるスポット。 B-4 はコンピューターの操作を始めた。 スクリーンが点灯する。 素早い動作で入力を続ける B-4。 映像が切り替わる。 |
※8: Commander Donatra (ディナ・メイヤー Dina Meyer 映画「JM」、「ドラゴンハート」、「スターシップ・トゥルーパーズ」などに出演) 声:塩田朋子、DS9 ヴァッシュなど ドナトラ司令官。劇場字幕では階級が「中佐」と誤訳されている個所がありましたが、DVD版では修正されています ※9: Commander Suran (ジュード・チコレッラ Jude Ciccolella) 声:有本欽隆、TNG 2代目モリアーティ、VOY 2代目マークなど スラン司令官 ※10: Spot データの飼い猫。映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」以来の登場 |
10. 地球人でもない
話すシンゾン。「ロミュランは、どうやったか君の DNA を手に入れ、私が創られた。そして私が準備できれば、奴らは君と私を入れ替える予定だった…ロミュランの工作員を宇宙艦隊の心臓部に送り込む。大胆な計画だった。」 ピカード:「何が起こった。」 「ここロミュラスではよくあることだが…新政府が政権についた。計画の中止が決められた。奴らは私が見つかることを恐れた、戦争につながるかもしれないからな。……覚えている顔と、同じではないだろう。」 「…同じじゃない。」 「…暴力に満ちた生活だとこうなる。鼻とあごは折られた…だがほとんどは同じだ。目は…確かに目には覚えがあるはずだ。」 「…ああ。」 「我々の目は人生を反映してるだろうな? そして君のは、とても自信にあふれている。」 シンゾンのグラスに注ぐピカード。「そして私は君が思っていたほど背が高くはない。」 シンゾン:「ああ、いつも 2メートルに達したいと思っていた。」 「私もそうだ。…どうしてレムスに行くことになったんだ。」 「私を死なせるためにそこへ送られた。」 宇宙に見えるロミュラス。レムスの暗い地表に、たくさんの巨大な施設がある。 シンゾン:『どうやって単なる地球人がディリチウム鉱山で生き残れる? そんなことは関係ない、私はもはや連邦に対しての計画から外れたのだからな。』 施設は地下に伸び、エレベーターが走っている。 『あんな過酷な地底で生き残るのは、呪われた者だけだ。レムス人の奴隷たちと共に、私はロミュラン看守の残忍な抑圧の下で、絶え間のない労働と飢えという存在になることを強いられた。』 洞窟の中に連れてこられる子供。 『本当に強い者だけが、生き残る望みを得られる。連れられてきた時、私はほんの子供だった。』 不安そうな顔を浮かべる、子供の頃のシンゾン。 シンゾンは言った。「そして 10年近く、再び太陽や星々を見ることはなかった。…ロミュラン看守がレムス人以上に嫌った唯一のものは、私だ。」 地面に倒される子供のシンゾン。 立ち上がるシンゾン。「だが一人の男が私に情けをかけてくれた。」 倒れた子供の前から、レムス人が近づく。 『私の副官となった男だ。』 出ていくロミュランの看守。 『彼は私を看守の残酷さから守り、生き残る方法を教えてくれた。そして自分を見失ったあの暗い場所で、私はレムス人の兄弟たちを得た。』 レムス人は子供を立たせた。 現在のシンゾン。「彼らは私が知る限り、唯一本当の親切さを見せてくれた。」 ピカード:「君はレムス人を解放するためにこんなことをしているのか?」 「それが私がやった全ての元となる、たった一つの考えだ。シミター※11を秘密基地で建設することから、最終的にロミュラスへ大挙して来ることになる私の軍隊を招集することまで。奴らが決して我々に自由を与えないことはわかっていた。行動する必要があった。」 「それで何人のロミュランが、君たちの自由のために死んだのか?」 「…数え切れない。だが肝心なのは、ついに帝国が良い道があると悟り始めたことだ。そして、その道とは平和だ。……君は私を信じていないな。」 「私には信じる理由がない。」 「理由ならいくらでもある。君が私と同じ人生を送り、仲間が苦しんでいることを知れば、私がいる場所に立っているだろう。」 「そして君が私と同じ人生を送れば、連邦に対する責任を理解するだろう。個人的な感情で、極度に決定に影響させることはできない。」 「私にあるのは個人的な感情だけだ。」 近づくシンゾン。「…地球人になるとはどういうことなのか知りたい。レムス人は私に未来をくれたが、君は私の過去について語ることができる。」 「私の過去なら君に話せる。」 「…我々ピカード家はずっと戦士だったのか?」 「私自身は探検家だと思っている。」 「ああ、我々はずっと探検家だったのか。」 「…私は我々の太陽系を離れた、初めてのピカードだった。家族に大混乱を引き起こしたよ。だが…私は幼い頃…」 言葉を引き継ぐシンゾン。「何があるのかを空想しながら星々を見上げていた。未知の…」 ピカード:「世界について。……君を信じようと思う、シンゾン。」 外の広間へ向かう。「連邦が最も尊重する理想が一つあるとすれば、それは全ての者が…全ての種族が一つになれるということだ。宇宙艦隊の艦長がロミュラン議会に立つことほどの好例はない。君と友好の手を結ぶことほど、私が光栄に思うことはない。…いつか…その信頼を得た暁には。」 ブリッジに戻ったピカードに報告するウォーフ。「艦長、我々はメインコンピューター内に無許可アクセスを受けています。」 ピカード:「出所は?」 ラフォージ:「それを突き止めるにはしばらくかかります、艦長。データ流は船中のサブステーションを通って迂回されています。」 「何のプログラムがアクセスされたんだ。」 「ええ…それが理解できないことなんです。ほとんとは単なる基本的な星図作成情報です。星図、通信手順、植民地追跡基地からのアップリンクがいくつか。制限された資料でさえありません。」 「いずれにせよ、我々は出所を知らねばならない。随時知らせてくれ。」 「艦長、まだあります。センサー記録を再調査していたんです。これを見て下さい。」 画面をグラフに切り替えるラフォージ。「シミターが遮蔽解除した時、第三電磁帯に瞬間的な上昇がありました。ここです。信じられないと思います。セラロン※12です。」 グラフを見るピカード。「セラロン放射線は理論上のものだと思っていたが。」 ラフォージ:「そのため当初のスキャンでは捉えられませんでしたが、彼はもっています、艦長。」 「セラロン研究は生体特性のため、連邦では禁止された。」 クラッシャー:「有機物質を原子未満のレベルで破壊する能力があります。セラロン放射線の危険性を大げさに言っているんじゃないわ、ジャン・リュック。微少な量でも、この船の全ての生体を秒単位で殺すことができます。」 「わかった。見張ってくれ。彼が何をもっているのか、どうやったら我々がいかなる脅威でも無効化できるかを知りたい。選択肢が必要だ。」 医療室を出ていくピカード。 データは画面を見た。 副官はシンゾンに近づいた。「これは間違いだった。我々は時間を無駄にしている。」 シンゾン:「私の時間だ。だから私が選んだ方法で使うつもりだ。」 「我々の任務を忘れるな、シンゾン。我々は今すぐ行動しなければならない。」 うなずくシンゾン。「シミターに戻る。単に彼に興味があっただけだ。」 シンゾンを見る副官。歩いていった。 ピカードがアカデミー候補生の頃の写真。シンゾンと同じ顔だ。見ていたピカードはドアチャイムに応えた。「入れ。」 部屋の前に立っていたのは、クラッシャーだ。 ピカード:「ビヴァリー、入ってくれ。」 写真を渡す。「彼を覚えてるか?」 クラッシャー:「覚えている限り、ちょっと横柄だったわね。」 「とんでもない馬鹿だった。自分勝手で、野心的で、何の味付けもされていなかった。」 「彼はすっかり変わったわ。」 「…本当はシンゾンを信じたかった。だが、あのセラロン放射線を見逃してしまうことはできない。彼が求めているものが何であれ、それは平和ではない。」 「そんなにあなたの昔の頃そっくりなの?」 「……ああ、そうだ。」 通信が入る。『データよりピカード艦長。』 ピカード:「何だ、データ。」 データ:『艦長、ジョーディと私で無許可のコンピューターアクセスの発生源を特定しました。我々は戦術的に有利にもちこむ方法を見つけたと思います。』 機関室にいるデータとラフォージ。 ピカード:『すぐに向かう。』 |
※11: ここだけ「シミター号」 ※12: thalaron |
11. 暴行
ネグリジェを着たトロイ。 ライカーも私服だが、コンソールで作業を続けている。 トロイ:「ウィル…船のカウンセラーとして、睡眠を取ることを勧めるわ。」 微笑むライカー。「大したハネムーンだな。」 トロイはライカーの手を引っ張った。「ベッドに来て。」 裸のライカー。「イムザディ※13。」 キスし、抱き合う二人。 音楽が響く。 鏡に映ったトロイの相手は、シンゾンになっていた。 驚くトロイ。 シンゾン:「イムザディ。」 トロイ:「やめて。」 「奴は決して私のように君を知ることはできない。奴は決して私のように君に触れることはできない。」 「これは現実じゃないわ。」 「私の唇を感じろ。」 首にキスするシンゾン。 シンゾンの頭に手を乗せた副官。 起きあがるシンゾン。すると、その姿が副官に変わった。「一緒にいるぞ、イムザディ。」 叫ぶトロイ。 副官:「もうこれからも常に一緒にいる。」 押しのけるトロイ。「やめて!」 驚くライカー。 トロイ:「これは現実じゃない。これは…」 ライカー:「ディアナ…どうしたんだ?」 「やめて!」 「ディアナ。ディアナ。ディアナ!」 「やめて!」 ※14制服姿のトロイは、独りでターボリフトに乗った。「第7デッキ。」 移動し始める。 後ろにシンゾンが立っていた。「イムザディ。」 驚くトロイ。心臓の鼓動が聞こえる。「…あなたはここにはいない。」 シンゾン:「とても論理的だな、ディアナ。だが君の心は単純な論理に対して抑えられない。君の心は私を詳しく知りたいと切望している。」 頭に手が置かれたシンゾン。「私は、レムス人のやり方を知りたいと君が渇望するのを感じられる。」 その手は、後ろに立っている副官のものだ。 トロイを見つめるシンゾン。「昔ながらのやり方を。」 目に涙を浮かべるトロイ。 顔を近づけるシンゾン。キスしようとする。 突き放すトロイ。「やめて!」 離れたシンゾンは、そのまま消滅した。 トロイは目を閉じ、その場に座り込んだ。手で顔を覆い、うめく。 手を離す副官。「結合は断たれた。」 シンゾン:「彼女をもう一度見つけろ。」 副官はまた手を置くが、そこへレムス人※15が入ってきた。「執政官、我々は中継機の信号※16を受信しました。」 出ていく。 また苦しむシンゾンに、手を当てる副官。「加速している。もうゲームをやっている時間はない。」 シンゾン:「…医者たちに準備させろ。」 シミターのブリッジに戻るシンゾン。「転送しろ。」 操作するレムス人。 すると中央に、B-4 が転送されてきた。 シンゾン:「ダウンロード開始。」 取りかかるレムス人。艦長席に座るシンゾン。 B-4 の記憶ポートにケーブルがつながれる。コンピューターに情報が表示された。 シンゾン:「ティー。ホットで。」 椅子の脇のレプリケーターに、カップが現れた。 トロイを診察するクラッシャー。「わずかにアドレナリンとセロトニンのレベルが上がっているのを除けば、完璧に正常ね。」 起こすライカー。 ピカード:「ディアナ…説明できるか?」 トロイ:「あれは…あれは暴行でした。…シンゾンの副官は私の思考まで到達する能力があるようです。私の存在は障害となりました。任務からの解任をお願いします。」 「要求は却下する。この襲撃が続いても君が耐えられるのなら、私のそばにいてもらいたい。今まで以上にな。エンタープライズは連邦領から遠く離れ…」 突然、ピカードの身体が転送されていく。 命じるライカー。「ウォーフ! シールドアップ!」 シミターは遮蔽していく。 |
※13: Imzadi で「愛しい人」と訳されているように、ベタゾイドの言葉。TNG パイロット版 "Emissary" 「未知への飛翔」など ※14: DVD 特典映像、削除シーンその5 「ターボリフトでの暴行」。予告編 (Teaser、Full Trailer の両方) では使われています。間のシンゾンと副官の映像は、一部だけ本編にもあります。元々直前のベッドシーンは、もっと前に入る予定でした。便宜上カットシーンをここに挿入しています ※15: レムス人士官 (ロバートソン・ディーン Robertson Dean TNG第140話 "Face of the Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」のパイロット、ENT第32話 "Marauders" 「招かれざる訪問者」のコロック (Korok) 役) 声:吉野貴宏 ※16: "transponder signal" を「転送 (transporter) 信号」と誤訳 |
12. 影の声
B-4 と共に部屋に入るシンゾン。「やあ、ジャン・リュック。」 レムス人の医者が作業している。 拘束されているピカード。「なぜ私を連れてきた。なぜこんなことをした。」 シンゾン:「私は孤独だった。」 レムス人がピカードに近づく。 ピカード:「…何をするつもりだ。」 シンゾン:「血液サンプルがいる。」 首に注射されるピカード。 シンゾン:「お前のボーグの友人たちは何と言うかな? 『抵抗は無意味だ。』」 ピカードは B-4 を見た。 シンゾンも振り返る。「ああ、そうだ…アンドロイドだ。拒絶できない囮。」 ピカード:「つまり君がしたこと全ては、私を捕らえるためか。」 「そんなにうぬぼれるな。我々がこれを見つけた後、多少改造の必要があった。追加の記憶ポート、隠蔽された中継機※17。私はもう宇宙艦隊の通信手順へのアクセスを手に入れた。」 血液が入った容器が取り出される。 シンゾン:「もうお前たち全艦隊の正確な位置も知っている。行っていい。」 B-4:「どこへ?」 「…私の視界から消えろ。」 部屋を出て行く B-4。 ピカード:「これは一体どういうことなんだ?」 シンゾン:「運命ということだ、ピカード。あるレムスの追放者ということだ。」 「君はレムス人ではない。」 「そして私は完全な地球人でもない。それなら私は何だ? 私の人生はお前がまだ生きている限り、無意味だ。…お前が存在している間、私は何だ? 影か? エコーか?」 「君の問題が私とのことなら、私と取引しろ。このことは私の船とは関係ない…連邦とも関係ない。」 「ああ、だが関係ある。我々はもう奴隷として誰にも屈しない。ロミュランにも、お前の強大な連邦にも。我々は戦争と征服のために生まれた種族だ。」 「自分の個人的な憎悪を満足させるため、全宇宙域を戦争に巻き込むつもりか?」 「お前が自分のことをほとんど知らないというのは驚くな。」 「私にはそんな行動はできない!」 「お前は私だ。」 作業中の機械から、血液の容器を引き抜くシンゾン。「同じ優れたピカードの血が、我々の血管を流れている。お前が私の人生を送っていたら、私と全く同じことをやるはずだ。だから鏡を見ろ。自分を見つめろ。…そのことを考えろ、艦長。お前にとってこれほど大きな苦痛はないと思うぞ。」 容器をレムス人に渡し、出ていこうとするシンゾン。 ピカード:「シンゾン。私も君にとって、同じく鏡だ。」 微笑むシンゾン。「もう少しだ、艦長。声がこだまする勝利を目にするまで、お前が生き延びないのは残念だ。」 出ていった。 モニターに星図が表示されている。 ラフォージ:「奴の遮蔽は完璧です。タキオン放射も、残留反陽子もありません。」 ライカー:「続けてくれ、ジョーディ。つけいる方法を見つけるんだ。」 スキャンが繰り返される。 シミター。 B-4 が戻ってきた。レムス人の護衛に話す。「シンゾン執政官が捕虜を呼んでいる。」 ピカードに近づき、ロックを解除するレムス人。B-4 はピカードに目で合図した。 気づくピカード。 ロックを解除したところで、レムス人はヴァルカン神経づかみ※18を受け、倒れた。 台を降りるピカード。「そろそろだと思った、ミスター・データ。」 データ:「私の任務は成功しました、艦長。」 ピカードの手錠のロックを外す。「放射線の発生源を突き止めました。この船全体が、実質的にはセラロン生成機です。パワーリレーはブリッジの起動マトリックスにつながっています。」 「これは兵器か。」 「そうだと思われます。」 「ダウンロードはどうなった?」 「シンゾンは我々の通信手順を手に入れたと思っていますが、全宇宙艦隊艦の誤った場所を示すようになっています。」 「よくやった。」 「艦長。」 データが腕をまくると、皮膚の下から小さな装置が現れた。「ジョーディが緊急転送ユニット※19の試作品を提供してくれました。これを使うのをお勧めします、艦長。エンタープライズへ戻って下さい。」 起動させ、ピカードに手渡す。 「これは我々のうち、一人にしか作用しないんだな。」 「…はい、艦長。」 データの腕にユニットを戻すピカード。「我々は一緒に逃げる方法を見つける。」 うなずくデータ。 |
※17: 原語では "hidden transponder"。 小型通信装置 小型電送装置 (劇場版字幕では、先ほどと同じく「転送」という誤訳) ※18: ヴァルカン・ナーヴピンチ Vulcan nerve pinch または首つかみ (neck pinch)。TNG第108話 "Unification, Part II" 「潜入! ロミュラン帝国(後編)」など ※19: emergency transport unit 緊急転送装置 |
13. 脱出
シミターのブリッジで、座ってナイフを持っているシンゾン。 医者を引き連れた副官がやってくる。「…処置の時間だ。」 シンゾンはナイフを納めた。 手錠をはめられ、廊下を歩くピカード。データが後ろを歩く。 整列したレムス人が通りかかる。 データは B-4 の振りをして、ライフルでピカードを突いた。「歩け、弱々しい地球人のけだものめ。」 つぶやくピカード。「もうちょっと穏やかにな、データ。」 遠くにシンゾンたちが見えた。隠れるピカード。いなくなったところで、また歩き続ける。 シンゾンは拘束室に入った。倒れたレムス人は意識を取り戻していた。 命じるシンゾン。「奴を殺せ。」 レムス人は副官に撃ち殺された。 廊下に警報が鳴り響いた。 ピカードの手錠を外すデータ。銃を渡す。「こちらです、艦長。シャトル格納庫が我々の現在位置から 94メートルの場所にあります。」 走り始める 2人。 レムス人が撃ってきた。応戦する。 データはドアを見つけた。「あそこです、艦長。」 ピカード:「行け!」 ライフルも投げ渡すデータ。ドアへ向かう。 2丁を使ってレムス人を倒していくピカード。 ドアの前に来たデータ。アクセスパネルを見つける。 ボタンを押すが、受け付けられない。 順番を変えて、次々とコードを入力するデータ。 応戦しながら次第にデータに近づくピカード。「データ!」 データ:「暗号セキュリティシステムを使っているようです。」 「機敏にやってくれると嬉しいぞ、少佐!」 「レムス語は最も複雑な言語であり、象形文字が特定の動詞原型を表していて…」 「それは興味深いと思うが、データ。我々は本当にそのドアを開けたいんだ!」 何度やってもコードは合わない。 だがついに反応した。微笑むデータ。 開いたドアから先に中に入り、ロックコードを入力する。 ピカードも撃ちながら、閉まりゆくドアの中に入った。 完全に閉じたところで、ライフルを使って間を溶接するピカード。 ドアに向かって撃ち続けるレムス人たち。 近くに置いてあるシャトルについて説明するデータ。「船のリストによると、これはスコーピオン級攻撃艇※20ですね。」 奥にもたくさんの攻撃艇が並んでいる。 コクピットを開けるデータ。 レムス人は攻撃を続ける。 乗り込んだピカードとデータ。覆いが閉まった。 コンピューターを起動させるピカード。「データ、これは何だと思う。」 後ろの席のデータ。「左舷スラスターです、艦長。私が操縦いたしましょうか?」 脇を見るピカード。データはそれ以上何も言わない。 ピカードは操縦桿を握った。 浮き上がるスコーピオン。 外へ向きを変える。 ピカード:「データ、シャトル格納庫のドアを開けられるか。」 データ:「開けられません、艦長。外部門の周りにフォースフィールドを張られました。」 「ああ、それなら…進む道は一つだな。」 方向を 180度変える。入ってきたドアが前に見える。 撃ち続けるレムス人によって、少しではあるが穴が空いている。 尋ねるデータ。「これは賢明な行動方針だとお考えですか、艦長。」 ピカード:「それを調べるつもりだ、データ。ディスラプターにパワーを。」 「準備完了です、艦長。」 「発射。」 スコーピオンの最上部にあるディスラプターが、ドアを撃ち破った。 勢いで吹き飛ばされるレムス人たち。 抜け出すスコーピオン。 広い廊下を進んでいく。 途中のレムス人が撃つが、全く効果がない。 スコーピオンは壁に当たりながらも飛行を続ける。 またディスラプターを撃ち、観察ラウンジに入った。 円形の窓を突き破る。 宇宙空間に出るスコーピオン。シミターの遮蔽は乱れたが、すぐに見えなくなった。 エンタープライズへ向かう。 シンゾンはスクリーンのスコーピオンに気づいた。「トラクタービームだ、急げ!」 エンタープライズに向かってくるスコーピオン。ブランソンたちはライカーに振り返った。 ライカー:「ウォーフ、転送機でロックせよ。」 操作するウォーフ。 転送されていくスコーピオン。 背後にシミターのトラクタービームが迫るが、既に遅かった。 見つめるシンゾン。 報告するウォーフ。「収容しました、副長。」 エンタープライズは反転し、ロミュラスを離れてすぐにワープに入った。 |
※20: Scorpion-class attack flyer スコーピオン級の攻撃艇 |
14. 崩壊の速度
怒っているスーラン。「もう限界を超えている。」 シンゾン:『我々は忍耐について話し合ったと思うが、司令官。』 議会のスクリーンに映っている。 シミターのスクリーンに映るスーラン。『私はもう我慢できない。我々はお前が行動を約束したから援助した。そしてまだ、お前は手をつけていない。』 立ち上がるシンゾン。「エンタープライズは問題ではない。中立地帯の外へも出られないだろう。…そして 2日以内に、連邦は修復不能なほどに機能しなくなる。それで君は満足かな?」 答えるスーラン。「…今のところは。」 シンゾン:『それでは私が戻れば我々 2人で、正しく尊敬を払うことについて、ちょっと会話することにしよう。』 微笑み、通信は終わった。ロミュランのシンボルが表示される。 タローラは気づいた。「奴の顔はどうしたのでしょう。」 議会を出ていくロミュランたち。 ドナートラはスーランを呼び止めた。「司令官、お待ちを。……本当にあなたの手を血に染めるつもりですか? 奴は地球を負かすつもりではありません。全滅させる気です。…そうなれば奴の罪は、我々と今後何世代もの子孫に着せられることになります。」 出ていく。 報告するクラッシャー。「彼の DNA を研究するほど、混乱させられます。やっとで、私はたった一つの結論に達しました。シンゾンは時間 RNA 配列※21を使って創られました。そのためある時点で、艦長の年齢に早く到達するよう、加齢プロセスが加速するように計画されました。人生を 30年間飛び越えるよう設計された。ですが時間配列は起動せず、細胞組織が崩壊し始めました。…彼は死にかけています。」 ピカード:「死にかけている?」 ライカーも作戦室にいる。 ピカード:「彼にできることは何かないのか?」 クラッシャー:「互換のある DNA※22 をもった、唯一のドナーから完全な輸血※23を行う以外には…艦長からです。」 「……彼の残り時間は。」 「確かなことは言えませんが…崩壊速度は加速しているようです。」 「……それなら彼は私が目的で向かって来るだろう。」 B-4 は拘束されている。その前に立っていたデータは、B-4 の首元のスイッチで起動させた。目が動き出す。 B-4:「弟よ、私は…動くことができない。」 データ:「そうだ。私は君の認識と会話サブルーチンしか起動していない。」 「なぜ?」 「君は危険だからだ。」 「なぜ?」 「君は、この船に対して利用される情報を集めるようプログラムされていた。」 「私は…理解できない。」 「…わかっている。……連邦に対するシンゾンの計画について何か知っているか。」 「…いや。」 「彼の船の戦術能力について、何か知識はあるか。」 「いや。…もう動くことができるのか?」 首を振るデータ。「いや。」 再びスイッチに手を伸ばす。 B-4:「何をしている?」 「君の活動を止めなくてはならない。」 「どれくらいの間?」 「…永遠にだ。」 操作を始めるデータ。 「それはどれくら…」 B-4 は動きを止めた。 「長い間だ、兄さん。」 |
※21: temporal RNA sequencing 可変リボ核酸 ※22: クラッシャーの口は「RNA」と言っていますが、「DNA」とアフレコされています ※23: 原語では "complete transfusion"。 骨髄移植。「骨髄」なら間違いとは言えないようですが、劇場版字幕では「脊髄」でした |
15. 戦闘配置
シミターの船体図が表示されている。 ラフォージ:「カスケード生体波※24と呼ばれています。セラロン放射線の独特な特性のため、エネルギービームはほとんど際限なく広がることができます。放射強度によって、船を包むことが可能です…惑星でも。」 ピカード:「彼は一つの動機のためには、そんな威力をもった兵器を造るしかなかったんだろう。地球を狙うつもりだ。」 トロイ:「どうして確信がもてるのですか?」 「彼の考え方はわかる。」 ライカー:「人類を滅ぼせば、連邦は機能しなくなります。」 「ロミュランが侵略する。」 「奴の遮蔽を見抜く方法はないのか?」 ラフォージ:「ありません。」 「つまり奴が宇宙艦隊の全艦の 10メートル以内を通っても、気づかれることはありません。」 クラッシャー:「…ですが、我々には一つ有利な点が確かにあります。…彼は生きるために艦長の血液が必要です。まず艦長を追ってくるでしょう。」 ピカード:「それを頼りにしている。…我々はセクター1045※25 へ向かうよう命じられた。我々の艦隊は、そこで合流するように方向を変えた。」 ライカー:「数は力になります。」 「そうだ、少なくとも、我々はそう望んでいる。彼にあの兵器を使わせてはならない。その他の問題は全て二の次だ。……わかったな?」 顔を見合わせるクルー。 ライカー:「了解。」 ピカードは観察ラウンジのデスクに触れた。「総員…戦闘配置につけ。」 壁面に設置されたフェイザーが配られていく。 機関室のラフォージ。「フォースフィールド起動。」 ワープコアの周りに、フォースフィールドが張られる。 ブリッジのクルーもフェイザーを準備している。 シミターのスキャン情報を確認するデータ。 エンタープライズの状況も表示されている。 『艦長個人日誌、補足。我々は連邦領へ最大ワープで向かっている。クルーは私が期待する熱心さをもって応えてくれた。そしてこれまで千回の戦場で戦ってきた、これまでの千人の指揮官と同様、私は幕開けを待っている。』 廊下を歩く保安部員たち。ピカードは部下に指示を出す。 ※26準備の進む医療室。多数の機材が持ち込まれる。 部下にパッドを渡すクラッシャー。「ありがとう。」 ピカードがやってきた。 気づくクラッシャー。ピカードに近づく。「艦長。」 ピカード:「新しい生命と文明を求めて。ゼフラム・コクレイン※27の言葉だ。知ってたか…チャールズ・ダーウィン※28が HMSビーグル※29に乗って出発した時、彼は一丁のマスケット銃ももたずに航海したんだ。」 クルーにフェイザーが配られている。 「それは時代が違うわ。」 「我々はどれだけ変わったのだろう。何か必要になれば知らせてくれ。」 クラッシャーは呼び止めた。「ジャン・リュック……彼はあなたじゃないわ。」 出ていくピカード。 ワープを続けるエンタープライズ。 シンゾンは、気分が優れないらしい。 副官が身体に手を当てる。 シンゾン:「時間は。」 副官:「数時間の問題だ。我々は処置を今すぐ始めなければならない。」 立ち上がるシンゾン。「我々が断層に着くまでの時間は。」 副官:「…7分だ。」 シミターのスクリーンには、エンタープライズが映っていた。 その先には緑の星雲が見える。 |
※24: Cascading Biogenic Pulse バイオジェニック・パルス ※25: Sector 1045 ※26: DVD 特典映像、削除シーンその6 「戦闘に備える医療室」 ※27: Zefram Cochrane ワープドライブを開発した地球人。TOS第31話 "Metamorphosis" 「華麗なる変身」など。前述の "To seek out new life and new civilizations." は TOS・TNG のオープニングにもありますが、コクレインの言葉だと設定されたのは ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」(正確には微妙に違います)。これも後の U.S.S.アーチャー同様、ENT 由来 「コックレーン」のみ ※28: Charles Darwin 1809〜1882年 「ダーウィン」のみ ※29: HMS Beagle TOS第43話 "Bread and Circuses" 「もう一つの地球」で S.S.ビーグルが言及。参考 軍艦 |
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