映画エピソードガイド
「ネメシス/S.T.X」 (3)
「スター・トレック ネメシス」
Star Trek Nemesis
[その1 | その2 | その3]
16. 鏡に映ったもの
エンタープライズ。 大きなスクリーンに、星図が映っている。 星図作成室に入るピカード。「データ、我々の現在位置はどこだ。」 現在位置が表示される。 ピカード:「後どれくらいで艦隊と合流する?」 データ:「我々の現在の速度では、およそ 40分以内です、艦長。」 針路の先に、7隻の連邦艦※1が待っている様子が映る。 ピカード:「……『わたしたちは、今は、鏡に映して見るようにおぼろげに見ている。』※2」 データ:「艦長?」 「彼は自分が鏡だと言った。」 「艦長の、ですか?」 「そうだ。」 「…同意できません。艦長とシンゾンは同じ遺伝子構造をもっていますが、人生に起きた出来事によって独特の個性が作られました。」 「私が彼の人生を送れば、人間性を否定した可能性はあるだろうか。」 「B-4 は身体的には私と同一ですが、神経経路は私ほど発達していません。ですが発達していたとしても、彼は私にはなり得ません。」 「どうしてはっきり言える。」 「私は向上を目指します、艦長。今の自分より良くなるために。B-4 はそうしません…シンゾンも同様です。」 その時、スクリーンの星図が乱れだした。 データ:「我々はバッセン断層※3を通過しています、艦長。映像はここを抜ければ復帰します。」 ピカード:「宇宙艦隊星図情報からの、我々のアップリンクにも影響するのか?」 「断層は長距離通信全てに影響し…」 連絡するピカード。「ライカー副長、回避行動。」 だが船が揺れた。 スクリーンに映るエンタープライズを、背後から攻撃するシミター。 シンゾン:「武器システムとシールドを狙え。エンタープライズを破壊させたくはない。」 エンタープライズに直撃する。 ワープコアのフォースフィールドは消滅した。 コンソールやコア自体から火花が散る。 エンタープライズはワープ航行を続けられなくなった。 同じく通常空間に出たシミターは遮蔽する。 静かに攻撃の様子を見守るシンゾン。「暗闇の中で見る方法がわかるかな、艦長。」 ブリッジに戻るピカード。「報告。」 ライカー:「奴は遮蔽を通して発射しています。我々はロックできません。」 ラフォージ:「第一撃で我々のワープドライブが停止させられました。通常飛行だけです、艦長。」 ピカード:「ミスター・ウォーフ、フェイザー全展開を準備。仰角ゼロ。合図で全バンク発射。シールド衝撃をスキャンしろ。光子魚雷、用意。」 ウォーフ:「了解。」 「発射。」 操作するウォーフ。 エンタープライズの周り 360度に、フェイザーが連射される。 後方のシミターに命中した。と同時に光子魚雷を発射するエンタープライズ。 だが全て外れ、シミターは再び遮蔽に入った。 シンゾンはつぶやいた。「遅すぎるぞ、爺さん。」 脇のパネルに触れる。「攻撃パターン、シンゾン・シータ。」 操作するレムス人。モニターにエンタープライズの狙う場所が現れる。 スクリーンを見る副官。 正確に命中していく武器。 遮蔽したまま攻撃を続けるシミター。発射時に揺らめくものの、時間は一瞬だ。 上からの攻撃を浴び、見上げるデータたち。 全て命中する。 モニターを見るデータ。「上部シールドを失います!」 ピカード:「左舷へ全軸回転。全腹部フェイザー発射。」 発射するウォーフ。 腹部を見せながらフェイザーを撃つエンタープライズ。シミターに当たってはいるが、遮蔽は解除されない。 残念がるウォーフ。「シミターの被害は最小限です。」 ライカー:「防御パターン、カーク・イプシロン※4。シールドをオンラインに戻してくれ、ジョーディ。」 ラフォージ:「取りかかっています。」 ピカード:「カウンセラー・トロイ、ブリッジに出頭せよ。」 ウォーフ:「艦長…呼びかけられています。」 「スクリーンへ。」 スクリーンに映るシンゾン。『ピカード艦長…お前の作戦室で話せるかな?』 ピカードは艦長席を立ち、作戦室へ向かった。 中に入ると、シンゾンがピカードの椅子に座っていた。 立ち上がり、デスクを突き抜ける。乱れる映像。 シンゾン:『私のホログラムエミッターは追跡できないぞ、艦長。だから気にするな。それに宇宙艦隊にも連絡できない。もう我々二人だけだ、ジャン・リュック。望み通りにな。』 ピカード:「なぜここへ来た。」 『お前の降伏を受け入れるためだ。私はいつでもお前たちを確実に殺すことができる。シールドを下げて、お前を私の船へ転送できるようにしろ。』 「それでエンタープライズは?」 『…お前の古くさい船にはほとんど興味はないよ、艦長。』 「私を見ろ、シンゾン。…君の心臓、君の手…君の目は私と同じだ。君を流れる血…形作るものは同じ。我々には同じ可能性がある。」 『それは過去だ、艦長…』 「未来にもなりうる。君の奥深くに隠され、ずっと何年も続いた痛みと怒りの下には、決して変わらないものがある。君自身を善人にする可能性だ。そしてそれは、地球人になるということだ。今の君以上の自分になるために。……ああ、そうだ。私は君を知っている。…星々を見て、将来を夢みた時があった。」 『…子供じみた夢だ、艦長。レムスのディリチウム鉱山に消えた。私はお前が今見ているとおりだ。』 「私にはそれ以上が見える。君がどうなるか見える。レムスのシンゾンや、ジャン・リュック・ピカードという男は、決して惑星全体の住人を絶滅させたりしない。彼はそんなことはしない。」 『…彼は人生によってそうなった男だ。』 「それなら、君はその人生をどうするつもりだ。憎悪の炎の中で浪費するのか。もっといい道がある。」 『遅すぎる…』 「そんなことは絶対にない。君にはまだチャンスがある。今すぐ正しい方を選んでくれ…」 『本当の自分と戦うことはできない。』 「いや、できる。」 離れるシンゾン。『お前に私の本質を見せてやる。我々の本質を。そして地球は死ぬ。覚えておけ、私はずっと永遠にレムスのシンゾンであり続ける。それからお前たちの存在がおぼろげな記憶に消え去った遥か後でも、私の声は時を越えて響き渡るだろう。』 ホログラムは消えた。 残されたピカード。 |
※1: "Star Fleet Battle Group Omega" 「宇宙艦隊戦闘グループ・オメガ」と表示された艦隊は、順に以下の通りです ・U.S.S. Intrepid イントレピッド NCC-74600 イントレピッド級。VOY第98話 "In the Flesh" 「偽造された地球」より ・U.S.S. Valiant ヴァリアント NCC-75416 クラス不明 ・U.S.S. Galaxy ギャラクシー NCC-70637 ギャラクシー級。DS9第150話 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」より ・U.S.S. Aries アリーズ NCC-45167 ルネッサンス級。TNG第40話 "The Icarus Factor" 「イカルス伝説」など。"AIRES" とスペルミス ・U.S.S. Nova ノヴァ NCC-73515 クラス不明 ・U.S.S. Hood フッド NCC-42296 エクセルシオ級。TNG パイロット版 "Encouter at Farpoint" 「未知への飛翔」など ・U.S.S. Archer アーチャー NCC-44276 クラス不明。ENT のジョナサン・アーチャー船長 (Captain Jonathan Archer) より。初のシリーズ外での ENT 言及と考えられます ※2: "For now we see but through a glass darkly." 新約聖書「コリント人への第一の手紙」13章12節より。参考 鏡におぼろに映ったものを見ている 我が身の暗い鏡 ※3: Bassen Rift ※4: Defensive pattern Kirk Epsilon 「カーク」はジェイムズ・T・カーク (James T. Kirk) のこと。初代 U.S.S.エンタープライズ船長 |
17. ロミュランの支援
シンゾンはブリッジに戻った。 スクリーンを見るレムス人。 前方のエンタープライズの前で、複数の船が遮蔽を解いた。 レムス人:「2隻の船が遮蔽解除します、執政官。ロミュランです。」 ロミュラン艦はエンタープライズの前で停止する。 作戦室から出てくるピカード。 ライカー:「艦長。」 スクリーンを示す。「この事態がこれ以上悪くならないように考えていたところです。」 正面に映った 2隻。 ウォーフ:「呼びかけられています。」 ピカード:「スクリーンへ。」 ドナートラ:『ピカード艦長、ウォーバード・ヴァルドア※5のドナートラ司令官です。我々が援助してもよろしいですか?』 「……援助?」 『帝国はこの事態が国内治安の問題だと考えています。我々はあなた方が巻き込まれたのを残念に思います。』 「…司令官、これが終わったら、一杯おごりますよ。」 揺れるヴァルドアで話すドナートラ。『ロミュラン・エールですね、艦長。いきましょう。』 艦長席に座るピカード。「あのレディの言うことが聞こえたな。いくぞ。」 攻撃を再開するエンタープライズ。 ウォーバードと共に、シミターを探す。 ピカード:「ミスター・ウォーフ、我々の攻撃をヴァルドアの戦術士官と連携してくれ。シールド衝撃があれば、三角測量で総攻撃だ。」 ウォーフ:「了解。」 ヴァルドアと協力して攻撃するエンタープライズ。 状況を見るデータ。「後部シールド、40%にダウン。」 ライカー:「シミターに船首を向け続けろ。前部シールドへ補助パワーを。」 ラフォージ:「了解。」 エンタープライズの光子魚雷を当てられたシミター。 シンゾン:「側面のウォーバードを狙え。私の合図で全ての前方ディスラプターバンク発射。」 片方のウォーバードを狙うシミター。 シンゾンはスクリーンのウォーバードを見つめる。 攻撃が命中し、ウォーバードの羽根がちぎれた。 破片がそばを飛ぶエンタープライズに命中する。 乱れるエンタープライズのモニター。 データ:「前部シールド、10%にダウン。」 ライカー:「向きを変えろ。」 操縦するブランソン。 方向転換するエンタープライズ。ウォーバード一隻がシミターを追う。 命じるシンゾン。「後部左舷領域の遮蔽解除。…緊急全艦停止の準備。」 副官:「何?」 「聞こえただろ。」 シミターは一部の遮蔽を解除していく。追うウォーバード。 ドナートラ:「奴は遮蔽を失うわ。全ての前方ディスラプターバンク準備。」 うなずくロミュラン。 シンゾンは後方から迫ってくるヴァルドアを見ている。 副官:「もう船が来るぞ。」 シンゾン:「…まだだ。」 容赦なく続くヴァルドアの攻撃。 副官:「執政官!」 シンゾン:「全艦停止! 発射!」 苦しむ。血管が皮膚に浮き出る。 停止するシミターの上を、ヴァルドアが追い越していく。 下からの攻撃をまともに浴びるヴァルドア。 あちこちで爆発が起き、倒れるドナートラ。 ヴァルドアは動きを止めた。 見上げるドナートラ。 シンゾンは艦長席に戻った。「…後部遮蔽を回復、向きを変えろ。」 漂うヴァルドア。 エンタープライズのスクリーンに映るドナートラ。『残念ながら酒は待たないといけないようですね、艦長。』 ピカード:「生命維持は保っていますか?」 『今のところは。でも身動き取れません。』 「わかりました。」 またエンタープライズへの攻撃が始まった。 |
※5: Valdore ウォーバードが「戦艦」 |
18. 私を覚えてる?
攻撃を受けるエンタープライズ。 ブリッジで火花が散る。 攻撃はやまない。 データ:「構造維持を失います、第12 から 17デッキ、セクション 4 から 10。」 状況図を見るラフォージ。「緊急フォースフィールド維持。」 ライカー:「そのデッキから避難させ、フィールドパワーを前部シールドへ回せ。」 トロイは言った。「艦長…彼らを見つける方法があるかも知れません。」 命じるシンゾン。「側面航行を準備。全ての右舷ディスラプターを撃て。」 歩いていた副官は、突然息を吸った。身体を震わせる。 シンゾン:「何だ? 」 答えない副官。 シンゾン:「どうした。」 副官:「…彼女が来ている。」 トロイは苦しい顔を浮かべながら、コンソールの上でウォーフと手を合わせている。薬指に光る指輪。 手を置いた座標入力によって、隣の星図の上でマーカーが移動していく。 見守るクルー。 少しずつ移動するマーカー。 息を荒げる副官。 また震え、目を閉じた。 副官の状態を話すトロイ。「彼は抵抗しています。」 操作を続ける。 マーカーが止まった。 叫ぶ副官。「やめろ!」 目に涙を浮かべたトロイは言った。「私を覚えてるでしょう。」 無言の副官。 指示するトロイ。「今よ!」 ウォーフは即座にボタンを押した。 エンタープライズは量子魚雷※6を発射した。 全てシミターに命中する。 爆発するシミターのブリッジ。 攻撃によって、遮蔽が大きく解かれた。 立ち上がるピカード。「総攻撃。」 フェイザーと魚雷が注がれる。 副官はシンゾンの肩に手を置き、立っているのもやっとだ。 反撃するシミター。 シンゾンは副官に言った。「乗船班を準備。ピカードを連れてこい。」 レムス人を呼ぶ副官。「来い。」 ブリッジを後にする。 指示するシンゾン。「遮蔽を戻せ! 全シールド座標を狙う、ベータ・3。全ディスラプター、発射。」 シミターに追われるエンタープライズ。 データ:「艦長、第29デッキ※7の中央シールドを失いました。」 ピカード:「全パワーを回して修復しろ。」 警報が鳴った。 ウォーフ:「侵入者警報。」 ピカード:「ナンバー・ワン。」 席を立つライカー。「行くぞ。」 ウォーフ:「保安部隊、第29デッキへ。」 代わりにコンソールにつく保安部員※8。 データが副長席に座る。 エンタープライズの廊下を進む、副官たちレムス人。 逆方向からライカーとウォーフたちがやってくる。 ウォーフ:「ロミュランは名誉ある戦いをしました。」 ライカー:「ああ、そうだな。ミスター・ウォーフ。」 突然撃ってきた。 撃ち合いになる。 副官とライカーの視線が合った。 素早く隠れる副官。廊下の壁に、ジェフリーズ・チューブの入り口を見つけた。レムス人に進むよう指示する。 銃を取りだし、廊下を横切りながら撃つ副官。 副官の銃にライカーが撃ったフェイザーが当たり、床に落ちた。だが副官はライカーを一瞥すると、ジェフリーズ・チューブの中へ入っていった。 ライカー:「ウォーフ、援護してくれ。」 床に伏せ、レムス人を撃つウォーフ。 ライカーはフェイザーライフルを持ったまま、副官の後を追った。 這ったままジェフリーズ・チューブへ出たライカー。副官の姿は見えない。 立ち上がり、フェイザーのライトを使って進む。 上の段からライカーを追う者がいる。 ライカーの背後から飛び降りてきた。 副官はナイフを取りだし、切りつける。痛みに叫ぶライカー。 体当たりする副官によって、フェイザーライフルは床の穴に落とされてしまった。 |
※6: これまでの黄色の光子魚雷ではなく、青色になっているので量子魚雷と判断しました ※7: 後で実際に向かいますが、エンタープライズ-E (ソヴェリン級) は全24デッキのはず… ※8: 演じるのはブライアン・シンガー (Bryan Singer)。スチュワートが出演している映画「X-メン」シリーズの監督であり、ノンクレジットのカメオ出演。元々はセリフもあったようです |
19. 衝撃に備えろ
シミターがエンタープライズの前方に迫る。 スクリーンを見るブランソン。 シミターが武器を連射してきた。と同時にスクリーンが破れ、爆発する。 ブリッジの空気が一気に吸い出される。 組み合っていたライカーと副官は、衝撃で離された。 ブリッジ前方のオプス士官は身体が浮いたが、コンソールにしがみついた。 しかしブランソンは叫びながら宇宙空間へ飛び去った。 必死につかまるオプス士官。 耐えるピカードたち。 やっとでスクリーンの穴にフォースフィールドが張られ、風は収まった。 目の前に広がるバッセン断層。ブリッジの中は滅茶苦茶だ。 通信するピカード。「医療班、ブリッジへ。」 ライカーは立ち上がった。副官の姿はない。 別の通路を歩き続ける副官。 ブリッジで話すクルー。「予備動力だけで機能…」「システム状況をチェックできたか?」 代わりにトロイがオプス席についた。 ピカード:「報告。」 データ:「光子魚雷を全て消耗しました。フェイザーバンクは 4%まで下がっています、艦長。」 「全フェイザーを集中パターンで狙ったらどうなる。」 ラフォージ:「シミターのシールドは、まだ 70%です。効果ないでしょう、艦長。」 クルーの声が聞こえる。「全デッキに被害。」 再び向かってくるシミター。だが何もせず、減速していく。 トロイ:「彼は何をしているんでしょう。」 シミターは接近し、動きを止めた。 シンゾンは無言で座っていた。 つぶやくピカード。「自分の目で私を見たいんだ。……隙ができたぞ。」 艦長席に戻る。「彼は私がすることが全てわかると思っている。ジョーディ、全パワーをエンジンに回してくれ。必要なら生命維持からも取れ。手に入る全てをくれ。」 ブリッジでは治療が続いている。 ラフォージ:「準備完了です、艦長。」 データ:「…呼びかけられています、艦長。」 ピカード:「ディアナ、待機せよ。チャンネルを開け。」 通信するシンゾン。「…まだ生きていると思ったぞ、ジャン・リュック。」 ピカードはコンソールを操作しながら応える。「ああ、そうだ。生きている。」 シンゾン:『…降伏する時だと思わないか? なぜ残りのクルーを死なせる必要がある。』 「シンゾン、まだ話していないと思うが…私が初めてアカデミーで受けた評価についてだ。」 トロイのコンピューターに、文字が点滅する。「私の命令で全速前進の準備」。 ピカード:「特に、私はこう思われていた。極端に…自信過剰だと。」 シンゾンは話し続ける。「艦長、お前との会話を楽しみたいが、私は本当に考えている…」 通信を切るよう、データに身振りで示すピカード。 突然切られたシンゾンは理解できない。 ピカードは命じた。「合図を待て、ディアナ。…総員、衝撃に備えよ。」 構えるデータとラフォージ。 ピカード:「発進。」 トロイは操作した。 動き始めるエンタープライズ。シミターへ一直線に。 シンゾンはスクリーンのエンタープライズを見つめた。 シンゾンを見るレムス人。 慌てて命じるシンゾン。「左舷全開!」 向きを変え始めるシミター。 シミターのスクリーン一杯に広がるエンタープライズ。 構えるピカード。 エンタープライズはシミターに激突した。 衝撃がピカードを襲う。 同様にシンゾンにも。 エンタープライズのブリッジでは、多数のクルーが姿勢を失った。 倒れるレムス人たち。 シミターに突き刺さっていくエンタープライズ。 船内の各所でも、大きな被害が及ぶ。 倒れるライカー。 何とか座っているピカード。 エンタープライズは、さらに深くめり込む。 副官も倒れていた。 シミターの船体が破片となって宙に舞う。 スコーピオンが並んでいるシャトル格納庫でも、端から爆発が迫ってきた。 逃げまどうレムス人。 エンタープライズの船体が、格納庫の床を根こそぎ破壊していく。 互いにぶつかり、木の葉のように舞うスコーピオン。 エンタープライズのブリッジは混沌としている。 ついに速度が落ち、一連の爆発が落ち着いた。 金属のきしむ音だけが響き渡る。 ピカードは立ち上がった。 シンゾンも身体を起こした。椅子に座る。 二つの船は、今は一つとなっていた。 再び歩き続ける副官。 突然蹴られた。 倒れ、ナイフを落とす副官。 拾おうとする副官に、ライカーが近づく。 シンゾンは命じた。「全パワーをエンジンに回せ。全速後退。」 操縦するレムス人。 シミターのエンジンが火を吹いた。 エンタープライズから離れていく。 また衝撃がエンタープライズのブリッジを襲った。 組み合っていたライカーと副官も、再び離される。 痛みに耐えるライカー。 シミターのシャトル格納庫からも、エンタープライズの船体が遠ざかっていく。 シミターのブリッジでも爆発は続く。 エンタープライズに切り裂いたような跡が残っている。 耐えるクルー。 船体間に隙間が空き始めた。 副官は軽やかな身のこなしを見せ、ライカーへ向かってくる。 ライカーはとっさに近くのコンソールから、電流が流れたままのケーブルを引き抜いた。 副官へ向ける。叫ぶ副官。 副官はライカーを突き落とした。縦長の通路に落ちる 2人。 途中の橋に叩きつけられる。 多数の破片が宇宙に舞う。 2人の重みに耐えきれず、橋と壁を結んでいた金具が抜けてしまった。叫ぶライカー。 橋は回転して下の台に引っかかり、逆さまになる。 何とか手を伸ばし、落ちるのを防いだライカー。 だが足には副官がしがみついている。 エンタープライズとシミターは完全に離れた。 必死にライカーをつかむ副官。 ライカーを支えているのは片手だけだ。 ライカーは副官の身体を蹴り、頭を強く踏みつけた。 耐えられず手を離す副官。「やめろー!」 絶叫しながら遥か下へ落ちていく。 姿は見えなくなり、その後に鈍い音だけがかすかに聞こえた。 |
20. 死に値するもの
互いに深く被害を負ったエンタープライズとシミターは、そのまま動きを止めている。 話す下級士官。「…現在再設定中。」 ピカード:「コンピューター、自爆シークエンス・オメガ※9を準備。音声パターンをジャン・リュック・ピカードと認識せよ。認証:アルファ・アルファ・3-0-5※10。」 コンピューター:『…自爆はオフラインです。』 考えるピカード。 シンゾンの身体は、もはや完全に変色している。 レムス人:「ディスラプターは機能しません、執政官。」 シンゾンはレムス人を見た。「兵器を展開せよ。あの船の全てを殺すのだ。そして地球へ針路を取れ。我々は任務を完了しなければならない。」 ボタンを出すレムス人。コードを入力する。 床が十字型に開いた。 コンピューターの声が流れる。『マトリックス開始。セラロン放射線移送の連鎖手順…起動。』 シンゾンは椅子に深く腰を下ろした。「命を捧げる価値をもった理想もあるだろうな、ジャン・リュック?」 セラロン発射室の床から、何本もの鋭利な金属が姿を現した。 中央に緑の光が発生する。 定期的な、低い音が鳴り始める。 コンピューター:『セラロン混合手順、開始。』 レムス人は別のボタンを押した。 コンピューター:『目標アームの展開を始めます。』 モニター上に、シミターの羽根が展開されていく様子が映し出される。 実際に広がっていく羽根。 まるでエンタープライズを威嚇する鳥のようだ。 ピカードはシミターを見ていた。「彼が撃てるようになるまでの時間は。」 確認するラフォージ。「目標シークエンスは約7分かかるはずです、艦長。目標アームが完全に展開されると、ブリッジのマトリックスで先端から発射点へ向けてセラロン放射線を中継します。エンタープライズで生き残る者はいないでしょう。」 だんだん開いていく羽根。 トロイ:「どうして彼にできるんでしょう。艦長を殺すことになります。」 ピカード:「もう私とは関係ないんだ。」 壁からフェイザーライフルを取り出す。「直接転送を準備しろ。」 ラフォージ:「艦長、転送はお勧めできませ…」 「これは命令だ、少佐。」 データ:「艦長、私に行かせて下さい。」 「データ、これは私がやらなければならないことだ。」 「艦長…」 止めるトロイ。「データ。」 ピカード:「ブリッジを頼むぞ、少佐。シミターとの間に距離を取るようにするんだ。いいぞ、ミスター・ラフォージ。」 ラフォージ:「了解。」 転送されるピカード。 シミターの廊下に実体化する。 ラフォージの前のコンソールが火花を吹いた。 ラフォージ:「…ほらきた。…転送機がダウンした。」 クルーの声が聞こえる。「…システムが飛んでいます。」 データは更に羽根の広がったシミターを見た。「カウンセラー・トロイ、指揮を御願いします。ジョーディ、一緒に来てくれ。」 ターボリフトに乗る 2人。 |
※9: auto-destruct sequence Omega 自爆シーケンス・オメガ 自爆手順オメガ ※10: Alpha-Alpha-3-0-5 アルファ 305 |
21. 対決
廊下を急ぐピカード。レムス人を撃っていく。 羽根を広げるシミター。後ろに下がるエンタープライズ。 廊下を歩くデータとラフォージ。 ずっと前方の壁に穴が空いている。 データは遠くにあるシミターを見つめた。ラフォージを振り返る。 トリコーダーを操作するラフォージ。データとの間にフォースフィールドが張られた。 見つめ合う二人。 ラフォージはうなずいた。 データはシミターの方を向くと、走り始めた。 ラフォージはタイミングよくトリコーダーを操作する。 データがギリギリまで近づいたところで、宇宙空間と隔てていたフォースフィールドが解除された。 空気と共に吸い出されるデータ。 滅茶苦茶に壊れたエンタープライズの円盤部から、一直線に飛び出す。 シンゾンはセラロン発射室に入り、螺旋状に立ち上る光を見ていた。 コンピューター:『セラロン混合レベル…30%。』 前方にシミターが迫る。 データは突き出た金属棒に手をかけ、勢いを弱めた。 羽根の展開は進んでいる。 シミターの船体をよじ登るデータ。遥か後方にエンタープライズが見えている。 シンゾンはスクリーンのエンタープライズを見ながらブリッジへ戻った。 後方にはセラロンの光が見えている。 コンピューター:『発射シークエンスまで 4分。』 ボタンを押し、パネルを開けるデータ。 シンゾンはスクリーンの前に立つ。 進む羽根の展開。 その時、ドアが爆発した。 振り返るシンゾン。 フェイザーを構えたピカードが入る。 シンゾンはセラロン発射室を見た。ピカードも。 ブリッジのレムス人がピカードを攻撃する。 隠れながら撃っていくピカード。 身をかがめるシンゾン。痛みの声を上げる。 コンピューター:『セラロン混合レベル、50%。』 ブリッジのレムス人は全員倒された。だが新たに入ってくる。撃ち続けるピカード。 後ろから殴られ、階段を転がり落ちた。 ライフルでレムス人を殴り倒すピカード。だが折れてしまい、もう撃てない。 コンピューター:『発射シークエンスまで 3分。』 ピカードは壊れたフェイザーライフルを捨て、セラロン発射室へ駆け上がった。 すぐにシンゾンも追い、階段からつかみ降ろす。 転がるフェイザーピストル。 つかみ合う二人。 ピカードはシンゾンをコンソール上に投げた。階段を上がる。 立ち上がったシンゾンはナイフを取りだした。 モニターに表示される、羽根の展開状況。 コンピューター:『セラロン混合レベル、60%。』 光の前に立ったピカードは腰に手を伸ばす。だがフェイザーを落としたことに気づいた。 引き返すが、ナイフを構えたシンゾンが立っていた。 振り回すシンゾン。ピカードは腕を取る。 シミターの羽根の先端から、何本もの新たな機械が伸びてきた。爪を広げ、根本に光が見えている。 ナイフで刺そうとするシンゾン。抵抗するピカード。 さらに動きを早めたセラロンの光。 ピカードは中心に押しやられる。 一瞬で向きを変え、その拍子にシンゾンはナイフを落とした。 空中を飛んだナイフは光の柱にぶつかり、消滅した。 ピカードを殴り倒すシンゾン。 コンピューター:『発射シークエンスまで 2分。』 シンゾンは、もう一本のナイフを取りだした。 立ち上がるピカード。壁にある金属棒に手をかける。 ナイフを構え、向かってくるシンゾン。 ピカードは瞬間、金属棒を倒した。 シンゾンの腹に、鋭利な先端が突き刺さる。叫ぶシンゾン。 シンゾンはナイフを落とした。ピカードを見つめる。 コンピューター:『セラロン混合レベル、80%。』 シンゾンは金属棒を両手でつかんだ。見つめるピカード。 身体に棒が突き刺さったまま、自らを根本にたぐり寄せ、ピカードに近づくシンゾン。 完全に身体を貫いている。 ピカードの目の前に来た。動かないピカード。 シンゾンはピカードの首をつかんだ。「…また一緒になれて嬉しいよ。…我々の運命は完結する…。」 だが目線を下げていく。シンゾンはピカードの身体に突っ伏し、息絶えた。 コンピューター:『発射シークエンスまで 1分。』 ピカードは虚ろな目をしたままだった。 |
22. 旅の終わり
そこへデータがやってきた。ブリッジに入る。 コンピューター:『セラロン混合レベル最高。』 モニターで状況を確認するデータ。 音が発する方を見上げると、セラロン発射室が見えた。すぐに向かう。 ピカードは中空を見つめたまま、立ちつくしていた。 近づくデータ。シンゾンの身体をピカードからどかした。 コンピューター:『発射シークエンスまで 30秒。』 ピカードはデータに気づいた。 無言で見るデータ。すると、ピカードの身体に何かを着けた。 起動された物は、あの緊急転送ユニットだった。 ピカードは口を開くが、転送されていった。 データは言った。「……さようなら。」 コンピューターのカウントダウンが始まる。『10…』 光の柱に向き直るデータ。 『9、8、7…』 フェイザーを向ける。 『6、5、4、3、2…』 発射するデータ。部屋が光に包まれる。 シミターは爆発した。衝撃波が広がる。 驚くトロイ。 外に広がる炎。ラフォージはトロイを支えた。 ブリッジに立っているピカード。外の炎は収まる。悲痛な表情を浮かべる。 振り返るラフォージ。 トロイもピカードに気づき、笑顔を見せる。「データは?」 ピカードは、首を振った。 ラフォージたちは外の残骸を見つめる。 ピカードもだ。宇宙空間には何も残っていない。 ライカーが戻ってきた。「艦長…。」 トロイと抱き合う。 トロイ:「データのおかげなの。」 もはや残骸さえもほとんど見えない。 ピカードは緊急転送ユニットを外し、見つめた。 ラフォージ:「…艦長、呼びかけられています。」 ピカード:「スクリーンへ。」 気づいた。「チャンネルを開け。」 ドナートラ:『こちらヴァルドアのドナートラ司令官。我々は医療人員と物資をシャトルで派遣します。』 「……ありがとう、司令官。」 『あなたは今日、ロミュラン帝国の友人となりましたね、艦長。後に続くことを願います。ヴァルドア、以上。』 「……ジョーディ…シャトル格納庫を到着に備えろ。…彼らは…ああ、彼らは我々の手順を知らないからな。…ドアを開けるだけでいい。」 ラフォージ:「処理します、艦長。」 「ブリッジを頼む、ナンバー・ワン。」 作戦室へ入った。 無言のクルー。 「シャトー・ピカード※11」と書かれたボトル。ワイングラスを手にするピカード。 受け取るトロイ。「ありがとうございます。」 観察ラウンジに集まった上級士官は、皆グラスを持っている。 ピカード:「今はいない友へ。」 グラスを掲げる一同。「家族へ。」 口にする。 泣くのを抑えられないトロイ。ライカーが肩に手を置く。 ラフォージもうつむいている。 口を開くライカー。「初めてデータと会った時、彼はホロデッキで木に寄りかかって口笛を吹こうとしていました。」 ラフォージは笑みを浮かべるが、目には涙が見えた。 ライカー:「あんなに面白いものは見たことがなかった。どうやっても、曲を上手く吹けないんです。あれは何の歌だったかな。思い出せない。※12」 ラフォージはデータの部屋で、残された物をまとめていた。ウォーフも一緒だ。 シャーロック・ホームズのディアストーカー帽。バイオリン。データの描いた絵。 ラフォージはホームズのパイプを取りだし、見つめた。 ふいにネコの声が聞こえた。スポットがコンソールの上に飛び乗る。 ウォーフを見るラフォージ。 するとスポットは、ウォーフの腕の中へ飛び込んだ。 不快な表情を見せるウォーフ。「私は…『ネコ好き』ではない。」 ラフォージ:「もうネコ好きだと思うよ。」 ウォーフはスポットを見つめた。落ち着いて喉を鳴らしている。 微笑むラフォージ。ため息をつくウォーフ。※13 |
※11: Chateau Picard フランスにある、ピカードの実家で栽培したブドウで作ったもの。TNG第76話 "Family" 「戦士の休息」など ※12: "Pop Goes the Weasel" 「いたちがぴょんとはねてでる」。TNG パイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」より。参考 ※13: 映画のスチール写真で、スポットをつかんだウォーフと、ラフォージが映ったものがあります |
23. 新たな希望
エンタープライズはスペースドックに入り、修理を受けている。周囲を飛び回るワークビー。 シャトル格納庫と直接つながっているドックは、地球の軌道上にある。 作戦室のピカードは、ドアチャイムに応えた。「入れ。…ウィル。」 ライカー:「退艦許可願います、艦長。」 「許可する。」 ライカーの前に立つピカード。「それで…タイタンはどこへ向かうのかね?」 「中立地帯です。我々は新たな任務部隊を率います。どうやらロミュランは対話に興味があるようです。」 「ああ、君ほど任務に最適な者は思いつかない。よければ、君の初めての指揮に、一言忠告してもいいかな。」 「何でもどうぞ。」 「副長が、君を上陸任務に行かせないと言ってきたら…」 ライカーは後を引き継いだ。「無視しろ。…そうします。」 階級章は、4つになっている。「……あなたにお仕えできて光栄でした。」 「…私もだ、艦長。」 握手する二人。ライカーはうなずき、部屋を後にした。 話すピカード。「…こんなことをしても意味があるかはわからないが、君に彼がどういう人物だったか知ってもらいたかった。我々に近づこうとする追及を通して、彼は人間的であるという意味を見せてくれた。」 前に座っているのは B-4 だった。「…私の…私の弟は人間ではなかったのにか?」 外にはスペースドックの一部が見え、小型機が活動している。 ピカード:「…ああ、違う。だがいろんな人間性の側面に対する彼の驚きや、好奇心によって、我々全員が自分の最高の一面を知ることができたんだ。彼は進歩した。…常に今の自分以上のものになりたかったから、変化を受け入れた。」 「…私は……私は理解できない。」 「……ああ、いつか理解できるといいな。」 ウォーフから通信が入る。『艦長、ワープエンジンをオンラインにする準備ができました。』 ピカード:「すぐに向かう。ラフォージ少佐に知らせてくれ。」 B-4 は机の上に置いてある物を、興味深げに見ている。 外へ向かうピカード。「後で話そう。」 ふいに B-4 は口ずさんだ。「Never saw the sun... Never saw the sun... Never saw the sun...」 歌詞を教えるピカード。「Shining so bright」 B-4:「Shining so bright... Never saw things...」 ハミングする。 「…Going so right.」 「Going so right.」 ピカードは微笑んだ。 自室を出ると、保安部員が待機している。 もう一度、B-4 を振り返ったピカード。 笑みを浮かべたまま、廊下を歩き出す。 エンタープライズの円盤部も修復されている。もうすぐ旅立てるだろう。 ※14ライカーはスクリーンの部分を見た。まだ映像ではなく、修理が進む外の様子が直接見えている。 ブリッジではウォーフが見守る中、エンジニアたちによって新たな艦長席が取り付けられている。 副長席に触れ、ターボリフトへ向かうライカー。 すると一人の宇宙艦隊士官が出てきた。「ライカー大佐。」 「ああ。」 「はじめまして、私はマーティン・マデン※15です。新任の副長です。」 握手するマデン。 「中佐。」 「大佐、私は艦長にお会いしたことがまだありません。大佐になら何か御見識をいただけるかと思いまして。」 ラフォージと顔を見合わせたライカー。「…ああ、ピカード艦長について一番大事なことは、艦長は型にはまった士官ではないということだ。いつもくだけたのを好まれる。」 微笑むラフォージ。 ライカーは真面目な顔で話し続ける。「つまり、艦長に好印象をもたれたいなら、ジャン・リュックと呼ぶんだ。」 うなずくマデン。「ありがとうございます、大佐。」 ライカー:「フム。」 マデンの肩を叩き、一瞬ラフォージの方を見てからターボリフトに乗った。 ウォーフもラフォージを見る。ターボリフトの中で微笑むライカー。 ウォーフはライカーを見た。閉まるドア。 マデンは作戦室へ、ゆっくりと向かう。入る前に気持ちを落ち着かせる。 新任オプス士官である若いアンドリア人※16女性が、マデンの緊張に気づいて微笑んだ。触角を動かす。 マデンはアンドリア人を見る。「それで…あの御方はどんな人なのかな。」 アンドリア人:「どうして御自分で中に入って確かめないんですか?」 ピカードはクラッシャーと、コンソールで話している。 宇宙艦隊医療部での新たなオフィスにいるクラッシャー。『想像できないでしょう、ジャン・リュック。みんな子供なのよ! 全員が宇宙生物学の高等学位を取って、宇宙域全ての病気を根絶しようと躍起になってるの。』 微笑むピカード。「昔からよく知っている、あるドクターを思い出すね…」 クラッシャー:『休む暇もないわ。一日中質問ばかり…楽しいけれど。ディナーに来ない? いろいろ話したいことがあるの。ベイジョーの楽団が士官用食堂に来てるわ。』 「今夜は無理だな。ここで仕事があるんだ。」 『それじゃまた。最後のダンスはあなたのために取っておくから。』 ピカードが作戦室から出てきた。 すぐに近づくマデン。「マーティン・マデン中佐、任務に出頭しました、艦長。」 ピカード:「船へようこそ、中佐。」 手を握る。「転属で、君が驚いていないならいいんだが。」 「大変名誉に感じています、艦長。」 「すぐに修理を監督してもらう必要がある。見ての通り、我々には話し合うことがたくさんある。私の部屋でディナーはどうかな、19時に。」 「それはいいですね、ジャン・リュック。」 立ち止まるピカード。ゆっくりとマデンに振り返る。 事態に気づいたマデン。「……ライカー大佐が一杯食わせたようですね。」 何も言わないピカード。 付け加えるマデン。「…艦長。」 離れるピカード。マデンは肩を落とす。微笑むラフォージ。 ウォーフ:「艦長。」 ピカード:「これは何だ。」 少尉が話す。「マーク7 です、艦長。最新鋭の人間工学設計、指令インターフェイス…」 ウォーフ:「艦長は以前の椅子がお好きだと言ったのですが。」 ピカード:「……ああ…一応…まあ試してみよう。」 座る。「…いい感触だ。」 少尉:「そのボタンを押してみて下さい、艦長。」 ピカードが言われたとおりにすると、一瞬でシートベルトが現れ、身体を固定した。その様子を見るクルー。 笑うピカード。「…そろそろだと思っていた。」 少尉はウォーフに向かって微笑んだ。 もう一度押すと、ベルトは元に戻る。 離れるウォーフ。 少尉からパッドを受け取り、マデンに渡すピカード。「ああ…副長、喜んで聞いてくれ。我々の最初の任務が与えられた。デナプ星系※17の探査に向かう。」 ウォーフやラフォージたちに言う。「面白くなるだろう。」 マデンに向き直るピカード。「そこは……人類未到の宇宙だ。」 ピカードの話を聞くマデン。 持ち場につくウォーフ。ラフォージはブリッジを出ていく。 作業を行うクルー。 エンタープライズは旅を続ける。 |
※14: DVD 特典映像、削除シーンその7 「新任の副長にアドバイス」。いわゆる「もう一つのエンディング」。元々は作戦室のシーンにつながるものと思われます (ピカードと B-4 のシーンは更にその前)。このカットシーンのみ窓の外も合成済みですが、最後のエンタープライズはチャプター3 冒頭の使い回しですね (DVD 収録用の処置だと思われます。もしカットされなかったら、きちんと新たに作られていたはず) ※15: Martin Madden (スティーヴン・カルプ Steven Culp) ENT第53話 "The Xindi" などにも出演) 「マッデン」のみ ※16: Andorians TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」など ※17: Danapp system デナブ星系 |
感想
今更 (2003年11月) 感想というのもなんですが、とりあえず DVD版も含めて書きたいと思います。 初めて劇場で観た時の感想は「あれ、これで終わり?」というものでした。ニュースページなどを作成していた以上、ある程度ストーリーは知っていたものの、物足りない感じでしたね。特にマデン副長は必ず出てくるものと思っていましたので (逆にカットされたはずのウェスリーがいたのは、いい意味で驚きでした)。DVD に入っているカットを全て付け足しても、別に間延びはしないような…。同じ料金払うんだから長い方がいいと思うのは、貧乏人だけでしょうか。 もちろん前作の「叛乱」と比べると格段に映画として完成されています。叛乱の時は「2時間版に過ぎない」という感想が多くて、私も実際そう感じました。今回は映画ならではの要素が多く、クルーの大きな変化という「単なる一つの事件」で終わらないところが良かったです。 映画ならではといえば、特撮や CG は言うまでもありません。DS9 での未曾有の戦闘を観た後だと、わざと艦隊戦を避けているようなバッセン断層の設定には苦笑しますが、それでも遮蔽艦との戦いは絶対に必見です。欲を言えば最後にタイタンを観たかった…。試写会も合わせて 10回以上スクリーンで観ることになりましたが、DVD を買って 14インチテレビの画面にエンタープライズが映った瞬間、劇場に通った意味があると再認識しました。 その DVD は本編が短いせいか、カットシーン入りの特典を含めても一枚だけです。吹き替えの配役はセリフがほとんどないカメオ出演を含めて、完璧でしたね (一部、声に 4年のブランクを感じさせる方もいましたが)。反面、削除シーンが字幕のみというのは非常に残念です。 ネメシスは公開前から (TNG の) 最後などと謳われていました。また興行成績も、残念ながら ST映画史上最低の大コケ状態です。4年間の空白、公開時期、宣伝方法、ストーリー自体、現在の STシリーズの不振…など理由はあれこれ言われています (日本では劇場版で ST を隠し、セルリリースでは ST をつけるというチグハグさでしたね)。ですが私はネメシスが最後だとは考えていませんし、また TNG 映画の可能性も十分あると思っています。と同時に「映画はもういいかも」という感情があるのもまた事実。でも結局新作が公開されたら、また何回も見に行っちゃうんでしょうけどね。次こそ吹き替え版を劇場で観られることを祈りつつ… (あ、地上波ゴールデン映画でのタイアップ放映も)。 |